認知度低めだけど実はすごい!大画家、雪村の展覧会、堂々開演。
時は戦国時代。雪村周継は北関東・常陸国部垂の守護大名、佐竹氏一族の子として生まれました。
一説には、雪村は家を継ぐべき立場にありましたが、側室の子供を寵愛する父親に嫌われて家を出され、禅寺に入ったと言われています。
有名な僧侶の幼少時代を紐解いてみると、あの一休さんは実は天皇の皇子であったり、雪舟は岡山の豪族の子供であったりと、裕福な生い立ちの人物が僧侶となるのは珍しいことではありません。
雪村は十代から佐竹氏の菩提寺の正宗寺で修行を積み、多くの絵画に接し、貪欲に技術を習得したと考えられます。
生没年は未だ不明で謎の多い画家ですが、尾形光琳をはじめ、雪村のファンは多く、光琳に至っては作品を模写するだけに収まらず、雪村が使ったと言われる石印まで所有していました。
MIHO MUSEUMで開催される本展は過去最大規模の回顧展。
大芸術家達を惹きつけてやまない、雪村の魅力を探ってみませんか?
こちらは雪村《呂洞賓図(りょどうひんず)》(16世紀)、大和文華館蔵(展示:8/20に終了)。
描かれているのは、呂洞賓という中国の仙人。
中国では、呂洞賓といえば、瓢箪(ひょうたん)を持ち、背中に剣を帯びた図像が一般的ですが、雪村は手に水瓶を持たせ、そこからにょろにょろと子龍を昇らせ、天空雨の龍と対峙させる、という独創的なユーモアあふれた呂洞賓を描いています。
強風が吹きつける中、呂洞賓は龍の頭上に立ち、かーっと目を見開いて、天空の龍を捉えています。
ものすごい迫力に圧倒されます。
こちらは、雪村《蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)(16世紀)、東京国立博物館蔵(展示:8/13に終了)。
右に描かれているのは、自分の魂を飛ばす李鉄拐(りてっかい)。
李鉄拐は自身の魂を飛ばして(幽体離脱?)出かけている際中、弟子が誤って彼の体を燃やしてしまったために、自らの体に戻ることができず、やむなく近くにあった死骸に乗り移ったと言われています。彼は中国を代表する八仙のひとりです。
この瞬間はまさに自らの魂を飛ばし、幽体離脱しているところ。
口からピューっと出たその先には、彼の小さな分身がいます。
こちらは雪村《猿猴図》(16世紀)、茨城県立歴史館蔵(展示:8/20に終了)。
右の作品、柔らかそうな毛に覆われた可愛いサルたちが何かを取ろうと川に手を伸ばしています。
左の作品では、ブドウに手を伸ばすサルと、そこから落ちるであろうブドウを狙っているサルが描かれています。
何とも微笑ましい光景ですね。
次に展覧会風景をご紹介します。
右に見える六曲一双の屏風は雪村《鷹山水図屏風》(16世紀)、東京国立博物館蔵(展示:8/6に終了)。
作品の中には、鷹の襲撃から逃れるようにウサギが隠れています。
こちらのコーナーは、雪村に私淑していた、尾形光琳をはじめ、酒井抱一の作品も展示されています。
大画家たちを魅了してやまなかった雪村の作品の魅力を是非会場でご体感ください。
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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