カラフルな絹谷ワールド全開!
幸せな場所には必ず色彩があり、色彩のない場所には生物は住めないと語る絹谷幸二。
彼が長年取り組んできたのが、「アフレスコ」(フレスコと同義)という壁画です。
彼は学生時代に法隆寺金堂壁画を目にし、壁画の持つ圧倒的な力強さに心を打たれたのをきっかけに、大学院で壁画技法を研究し、イタリアで本格的にアフレスコの技法を学びました。
それまで絹谷の作品は色調が穏やかで、やや物悲しい印象がありましたが、イタリア留学を機に、作品には鮮やかな色調が舞うようになりました。
一見ポップな作品に見える絹谷の作品ですが、よーく見てみると、そこには今にも崩壊してしまいそうな危うさが潜んでいます。
印象的だった作品を中心に、その世界観をご紹介していきます。
(左から)絹谷幸二《あううん・祈り》1996年 / 絹谷幸二《アルベリ(木霊)》1990年。
左の作品の中央に描かれているのは、祈りを捧げる人。
画面には「あううん」や、「波羅密多」という言葉がカラフルに描かれていますが一方では、「piece」の文字も見えます。
左の顔の目には釘のようなものが刺さっていますが、それでも諦めず、祈り続けているように見えます。
よく見てみると、戦争を意味するようなモチーフがあちらこちらに配置され、今にも崩壊しそうな危うさも感じられます。
絹谷幸二《富嶽旭日風神雷神》2017年
先ほどの作品とは打って変わり、絹谷は日本の伝統的絵画を踏まえてこんな作品も制作しています。
富士山のあたりは太陽が出ていて、天気が良さそうですが、風神雷神のいる下の天気はとても荒れ模様です。
風神雷神の表情に着目してみると、なんだかガキ大将のような風貌で、どこか楽しげに感じるのは気のせいでしょうか。
今年は京都国立博物館で、「国宝」展が開催されますね。
「国宝」展では、絹谷が描いた「風神雷神」のモチーフ元となっていると思われる、俵屋宗達の《風神雷神図屏風》が展示されます。
俵屋宗達の風神雷神図はこれまで様々な画家によって繰り返し描かれてきましたが、絹谷もその系譜に位置づけることができるのではないでしょうか。
絹谷幸二《ヴェネツィア朝陽・希望》2006年
描かれているのは、朝陽にきらめくヴェネツィアの風景です。
絹谷が大学院時代に訪れたヴェネツィアの風景は、彼の心に深く焼きついており、彼の作品の持つ鮮やかさの原点がそこにはあります。
中央に描かれた教会堂の上には「Sallute」の文字が見え、登楼からは鐘が鳴っているのでしょうか。音符が飛び出しています。
最後に展覧会風景をご紹介します。
どーんと描かれたこちらの作品には、日本人なら誰でも知っているあの場所と、その上に立ち昇る龍が描かれています。
黒い壁に展示された極彩色の作品群。
色彩の鮮やかさに圧倒されることはもちろんですが、不動明王や阿弥陀如来の、静かでありながらも語りかけてくるような表情にもご注目ください。
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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