展覧会の初めから、いきなり出てくるメインビジュアルの人物像がこちらです。
《加彩胡人俑》甘粛省慶城県 唐 開元18(730)年 穆泰(ぼくたい)墓出土 高50.0㎝ 慶城県博物館蔵
このポーズ、どこかで見憶えがありませんか?
もしや、昨年、YouTube発で、世界で大人気になったあの方?
実はこちら、1100年以上も前の唐の時代の中国でつくられた「俑(よう)」、墓の副葬用の陶製人形なのです。
2010年に中国の甘粛省・慶城県の墓から発見された、ユーモラスで独特な俑を日本で初めて公開する今回の展覧会。
東洋陶磁美術館の開館35周年を記念すると同時に、日中国交正常化45周年を記念して開催中です。
唐の時代、都の長安(現在の西安)とシルクロードをつなぐ交通の要所であった慶城県では、西方からやってきて中国文化に大きな影響を与えた胡人=ソグド人が多く活躍していました。
アジア系の民族とは異なるエキゾチックな風貌と斬新な風習を備えた胡人たちの存在は、当時の中国の人々に大変印象深く、彼らを生き生きと表現した副葬品が作られました。
それにしてもヒョウ柄のパンツ(むしろリアルヒョウ皮パンツ)にバンダナ、ドヤ顔、このポーズ・・・
関西人の私にはツッコミどころ満載なのですが、ラクダを引いている仕事中の姿で、決してふざけているわけではないのです。
こちらの俑もなかなか強烈な姿をしていますよ。
《加彩胡人俑》甘粛省慶城県 唐 開元18(730)年 穆泰(ぼくたい)墓出土 高54.0㎝ 慶城県博物館蔵
太鼓腹を出しちゃってます。謎です。
現在でも中国では夏の暑い日にシャツの前をはだけてお腹を見せる男性もいるそうで、唐の夏の風物詩でもあったのかもしれません。
続いては何とも言えない表情のこちら。
《加彩胡人俑》甘粛省慶城県 唐 開元18(730)年 穆泰(ぼくたい)墓出土 高48.0㎝ 慶城県博物館蔵
とても怖い顔をしているのですが、当時流行していた、漫才のようにボケとツッコミのある大道芸を行っている場面を表現した可能性があるそうで、ますます関西っぽいです!
これらの俑に共通して言えるのは、パッと見て独創的で斬新、ユーモラスな魅力にあふれているだけでなく、よく見ると顔のシワ・ひげ・肌など細部に至るまで繊細な表現がなされていること。
目力もすごいです。ぜひ実物をじっくりご覧ください。
また、この展覧会と並行して、現代アートの人物像を展示した「いまを表現する人間像」が開催されています。
時代も地域も様々な作家による、多彩な表現の人物像。
舟越桂《銀の扉に触れる》1990年 高 92.5cm 国立国際美術館
ニキ・ド・サンファル《アダムとイブ》1977年 38.4×22.0×12.0 アクリル、色鉛筆、パステル、プラスチック 国立国際美術館
シュテファン・バルケンホール《裸体像・女》1999年 162.0×29.5×29.5 アユース材、彩色 国立国際美術館
ここまで見てきた唐人胡人俑と全く違う表現に戸惑いますが、あえて比較して楽しむための企画です。
先ほどまでの胡人俑が、「誰が」「何をしているのか」の想像を膨らませてくれるのに対して、これらの作品は、「どんな人物なのか」という像の内面や存在意義を想像させてくれます。
またさらに「人間とは?」そして「自分とは?」と、その先を問われているようにも感じられるのです。
それぞれの展示ともに見ごたえがあり、あわせて観覧することで、倍以上の愉しみ方ができる展覧会です。
全ての作品が撮影可能なので、携帯の待ち受けにしたりSNSにアップしたりの楽しみもありますよ!
大いに笑い、ツッコミを入れ、感想や画像を共有して、素敵な冬のひと時をお過ごしください。
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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