東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館「クインテットⅣ ─ 五つ星の作家たち」
文 [エリアレポーター]
松田佳子 / 2018年1月12日
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で行われた「クインテットⅣ-五つ星の作家たち」の内覧会に行ってきました。
この展覧会は継続的な「クインテット」という作品発表のシリーズで、将来有望な中堅作家5人を選んで開催しているもので、今回はその4回目ということになります。
第4弾の今回は、青木恵美子、竹中美幸、田中みぎわ、船井美佐、室井公美子の5人の女性作家が「具象と抽象の狭間」というテーマに取り組みました。
展覧会場に入ってはじめに目に飛び込んでくるのは、船井美佐さんの世界です。植物や動物たちが描かれた絵画や立体作品の中に、アクリルミラーが観る者を映しこみます。床に無造作に置かれた木馬が幻想と現実を行き来しているかのようです。
中央の黄色の立体作品は《まる・さんかく・しかく》
船井美佐さんの作品を抜けると大きな部屋に出ます。
右手には、ダークな色調の大きな室井公美子さんの作品です。恐ろしいようでもあり、でも一歩踏み込んでみたいようにも思う不思議な世界観です。ギャラリートークでも「あの世」と「この世」狭間の世界の話が出てきましたが、「あの世」は私たちの生きる世界につながっているものでもあるからでしょうか。
作品の紹介をする室井公美子さん
左手に見えてくるのは、竹中美幸さんのブース。透明感にあふれています。フィルムに焼き付けられた色彩、アクリル板に閉じ込められた光と影。小さな世界にも見えながら、大きな広がりを感じ、心が透き通っていくようにも思えます。
35mmフィルムの作品
《何処でもないどこか(境界に浮かぶ橋)》を間近で見ると
会場を進むと、右手の青木恵美子さんの色鮮やかな世界と田中みぎわさんの墨の世界の対比も面白いです。
青木恵美子さんの作品は赤、青を中心とした存在感のある色の世界が私たちを惹き込みます。アクリル絵の具を盛り上げ引っ張って作られているという花のモチーフは、観る方向によって異なる陰影の面白さを感じます。
左から《密やかなお願い》、《静かな始まり》、《夏色》
連作《INFINITY》の前で説明する青木恵美子さん
一方で、田中みぎわさんの墨と水にこだわり、黒の濃淡、滲みにより表現された風、水、光は私たち日本人誰もが共感できる原風景へと誘います。急に降り出した雨や雷など急な天気のうつろいなどを繊細かつダイナミックに表現しています。
幅720cmもの大作《やさしい雨》
5人の作家は、同世代の女性です。同じ時代を生きている女性であるにもかかわらず、これだけ個々の感受性が作品にまっすぐに反映されているというのは、とても面白いものです。これからますます評価が高まるであろう作家たちの溢れる個性を楽しむ展覧会でした。
エリアレポーターのご紹介
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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