年に1回、恒例展示を毎年鑑賞する楽しみ
※主催者の許可を得て撮影しています
根津美術館では「光琳と乾山」が開催されており、プレス内覧会に参加しました。
恒例《燕子花図屏風》の展示は、この季節の風物詩です。
一つの作品をライフワークとして見続けると、作品の中に自分の鑑賞経験が刻みこまれていくのを感じます。
最初は、新たに理解することも多く発見もいっぱい。作品のどこに注目し、何に興味を持つかも変化します。
ところが数年たつと、理解も落ち着き見慣れて、関心が下がってくるのを感じていました。
その間に見た作品や体験、過去の鑑賞も影響するようです。
新たな発見ができなくなると興味も薄れます。昨年は其一の《夏秋渓流図》に心は奪われていました。
デザイン的に秀でた作品と理解したあと…
燕子花図屏風 尾形光琳筆 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
この屏風は、呉服商に生まれた光琳が、着物の染色で使う型紙の技法を取り入れ、同じ図案を各所にちりばめたと聞きました。しかし、それがどの部分か全くわかりませんでした。
やっと見つけ、光琳の偉業はデザイン化だったと理解しました。
ところが次に見た時は、単調なパターン画に見えたのです。それは其一の《朝顔図屏風》と出会い、同じ3色を使った繰り返しなのに、朝顔は表情豊か。燕子花は面白みに欠けると感じるようになっていました。
年1回の鑑賞は、自分の興味がどこに向かい、何を見ているのか。他の作品の鑑賞体験や、いろいろなジャンルの見聞が影響します。
自分と作品がどのようにつながって、見た印象を作り出すのかが次第に見えてきました。
今年の新たな発見、左右で違った!
「屏風は右と左で見え方が全く違う」ことは既知のことでした。ところが、入口を入って見た瞬間、様子が全く違うのです。今まで何度も、角度を変えて見たはずなのに…
奥に見える燕子花、こんなに色が濃かったっけ?
空間構成も、こんなに立体的だった?(展示場所と動線が変化したから?)いつの間にか「平面的なデザイン化」された作品と固定して見ていたようです。
左隻に回ると突然、視界が奥へはじけ飛んだ気がしました。
手前の「濃い花」と右隻の「薄い花」の階調が、遠近効果をより増幅させたようです。ぜひ会場で体感して下さい。
燕子花のバリエーション
▼花色もこんなに違う
▼いろいろな表情をした花や蕾の存在
単調な青で面白みに欠けると思っていましたが、同じ群青でも、色や重ね方が違います。ベタ塗りと思っていた花は花びらの周囲に絵の具を重ね縁取りされていました。
自然観察からパターン化
蕾のパターンについて担当学芸員の野口剛氏に伺いました。
「庭園の蕾を見ていると、屏風に描かれたとおりに膨らんでほどけていきます。葉は3~4ストロークでリズミカルに描かれています」と。
毎年、庭の散策をすると、私たちも燕子花の様々な瞬間に出会えます。
(左)散り際のカキツバタ 2015.5.13 庭園(初めて来館時)
(右)これから蕾に 2018.4.13 庭園(今年の様子)
《燕子花図屏風》は緻密な観察によって自然の変化を捉えた作品だと確信しました。
変化の一瞬を選びとり普遍的な美しさにデザイン化し、時代を経て魅了し続けます。
今年は、デフォルメされた花が、自然から屏風に転写されたエッセンスだったことを理解しました。
訪れる時期や年によって変化する様子を屏風と比較してみては?
▼見ごろのカキツバタ
根津美術館 庭のカキツバタ
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