泉屋博古館分館では、6月2日より「うるしの彩り―漆黒と金銀が織りなす美の世界」が開催されています。
泉屋博古館入り口
漆工芸は、日本を代表する工芸美術です。
現代の私たちの生活の中にも主に食の文化の中で息づいています。
この展覧会は、住友家伝来の漆工芸品を、「能とうるし-楽器と衣桁-」「宴の器」「伝統文化とうるしの美術」「中国から琉球、そして日本へ」「伝統と革新-明治時代の漆芸家たち-」と、5章に分けて展示しています。
(雲龍蒔絵大鼓胴 江戸時代)
「能とうるし-楽器と衣桁-」では、日本の伝統芸能である能とうるしの関係がわかる展示です。
(源氏車夕顔蒔絵太鼓胴 銘「玉の尾」 江戸時代)
能で使われる小鼓、大鼓、太鼓、笛といった楽器が蒔絵で飾られてきました。
また、会席に使われる膳椀や盆なども、謡曲がテーマになっているものが多々ありました。
モチーフを見て、どの謡曲から着想されたかがわかることは知識人としての素養だったことでしょう。
「宴の器」では、人々が集い、楽しむ宴の席で使われる道具が展示されています。
(蜻蛉枝垂桜蒔絵香箱 江戸時代)
こちらは、平蒔絵に針描や鮑貝、鉛の金貝を使って、春秋の草花と虫たちを幻想的に描いた見事な香箱です。
「伝統文化とうるしの美術」では、茶道具や香道具、硯箱などの展示です。
知識人たちのたしなみであったこれらの伝統文化に使われる漆工芸は、季節や文学的な意匠が用いられてきました。
(牡丹唐草文蒔絵提重 江戸時代)
こちらは、今の時代でいうところのピクニック用品でしょうか。
徳利やお重が揃いになってコンパクトに収納されています。
唐草の模様が美しい蒔絵の逸品です。
江戸時代の人々はここにどんな料理を詰めて戸外に出かけたのでしょうか。
「中国から琉球、そして日本へ」のコーナーは、中国で発祥した漆工芸が琉球に伝わり、日本へと伝来した品々が展示されています。
(双龍図堆黄長方盆 明 万暦20年)
こちらは明の時代の盆ですが、本来5爪を持つ龍は皇帝しか使用することができません。
この盆に描かれた龍の爪は不自然な間隔の4爪です。
元々あった5爪のうち1爪を削り取ったと考えられています。
皇帝の持ち物が下賜されたということでしょうか。
(吉野山蒔絵十種香箱 江戸時代)
「伝統と革新-明治時代の漆芸家たち-」では、柴田是真、迎田秋悦らの作品が展示されています。
近代になって作家として漆芸家の名が伝わるようになりました。
特に柴田是真は欧米でも「ZESHIN」として高い人気を誇りました。
繊細で美しいうるしの工芸品。
ただただ見事なだけでなく、季節や物語、能の主題など奥深いものでした。
日本の美の世界を十分に堪能することができました。
エリアレポーターのご紹介
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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