豊かな風土を持つ日本では、美しい風景を描いた名所絵・風景図が昔から楽しまれてきました。
ただ、そのアプローチは一様ではありません。川に紅葉を加え「龍田川」のように、“お約束”としての名所。あるいは実際に赴いて感じることを大切にした江戸時代の文人画家たちなど、時代や背景によってさまざまに表現されてきました。
展覧会では風景図を中心に、版本や蒔絵、茶道具、煎茶道具、文房具なども含め、前後期あわせて全70件を紹介していきます。
会場会場は都の賑わいを描いた屏風から始まりますが、この作品をさらに楽しめるのが、大型ディスプレイを使った「見どころルーペ」です。
タッチパネル式で、屏風の各所を自由に拡大できるすぐれもの。犬が曲芸をしていたり、田楽を食べていたりと、実に楽しそうな人々の営みが描かれていることが分かります。
屏風は、2/1~2/16は《江戸名所図屏風》(うち左隻「隅田川図」)、2/18~3/16は重要文化財《四条河原遊楽図屏風》と展示替えされますが、「見どころルーペ」は会期を通して両作品とも鑑賞可能です。
展示室前の「見どころルーペ」東海道の宿場町を描いた《双筆五十三次》は、背景の風景を歌川広重が、前の人物を三代豊国が描いた合作です。ともに当時は超売れっ子だった浮世絵師なので、夢のコラボ企画といえるでしょう。
この作品は門外不出。蛇腹状に畳まれていたこともあって状態が極めて良く、発色の良さも特筆されます。動画でご紹介している分は前期展示(2/23まで)ですが、後期展示(2/25から)も別の場面が展示されます。
歌川国貞(三代豊国)、歌川広重《双筆五十三次》日本の名所の筆頭といえば、もちろん富士山。古くから信仰の対象であったと同時に、名所として多くの作品に表現されてきました。
会場では、三保の松原とともに描かれる定番の構図のほか、実際に富士に登って山頂の絵を描いた作品なども展示されています。
公式サイトでも案内されているように、実は
静嘉堂文庫美術館は「富士山の見える美術館」。特に冬のこの時期は、天気が良ければラウンジから富士山を見ることができます(朝イチがおすすめです)。
天気が良ければ、ロビーから富士山がくっきり。「富士見西行」を楽しんでいる《西行法師坐像》は、一緒に記念撮影も可能です。時間が許せば、ぜひ列品解説にあわせてお越しください。ご紹介した浮世絵《双筆五十三次》の驚くべき秘密など、普通に見るだけでは気づかない細かな部分について、興味深い解説をお楽しみいただけます(2/22(土)、3/8(土)、3/13(木) それぞれ11:00~)。
本展の会期終了後(2014年3月17日~)、改修工事のため休館になる
静嘉堂文庫美術館。再オープンは1年半後の2016年秋を予定しています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年2月7日 ]