読者
    レポート
    東京都庭園美術館「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」
    東京都庭園美術館 | 東京都

    東京都庭園美術館「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」

    文 [エリアレポーター]松田佳子 / 2018年10月5日
    東京都庭園美術館の建物は、1933年に建てられたアール・デコ様式で有名な旧朝香宮邸です。そんな建築ならではのアール・デコの展示は、当時の雰囲気を味わいながらの素敵な展覧会です。

    今回は、アール・デコの服飾や調度品、絵画、彫刻の中でも、特に「エキゾティック×モダン」に着目しています。
    フランス発祥のアール・デコは1920年代から始まったデザイン様式。直線的ですっきりとしたモダンさが特徴です。

    この当時は世界的にジャズが流行り、黒人プレイヤーがアメリカから渡欧してきました。 また、アジアやアフリカなどの独特の文化が植民地から入り込んできました。 それまでの西洋文化と異なるエキゾチズムが、アール・デコのデザインのヒントともなっていました。


    展示風景 左手前 ポール・ポワレ カフタン・コート《イスファハン》
    ポール・ポワレは、コルセットから女性を解放したデザイナーですが、モードの世界に異国情緒を取り入れたひとりでもあります。
    着物のような打ち合わせやなど、東洋を意識したシルエットや布地を使い、パリの女性たちを魅了しました。


    ヴァン・クリーフ&アーペル 左《中国風の卓上時計》 右《中国人奇術師の懐中時計》
    ヴァン・クリーフ&アーペルやショーメといった高級宝飾店では、時計やジュエリーのデザインにエキゾティックなモチーフを使いました。
    これらを所有する上流社会の人々には「モダン」なデザインとして受け入れられていたようです。

    右の《中国人奇術師の懐中時計》はボタンを押すと奇術師の腕が上がり、時・分を指すのだそうです。動いているところを見たかったです。


    展示風景 正面 ジャン・デュナン《栗の木》
    ジャン・デュナンは、渡仏した漆職人の菅原精造から技術を学びました。
    2階広間に飾られた《栗の木》という作品は、この建物の室内装飾ともよく調和しています。


    ポール・コラン《シャンゼリゼ劇場 バル・ネーグル》
    黒人ジャズ・プレイヤーと共に注目を浴びていたのが、黒人ダンサーたちでした。
    その中でもジョセフィン・ベイカーは「黒いヴィーナス」と称えられるほどの人気を博しました。

    また、黒人ピアニストを恋人にしたイギリスの資産家ナンシー・キュナードは、人種差別と向き合うことになりました。
    こちらの展示室では2人の女性に注目しています。


    ルネ・ブルー デザイン / エドモン・タピシエ タペストリー原画《肘掛け椅子》
    こちらの肘掛け椅子は、アフリカのラクダとインドシナの象そしてフランスを表す鶏があしらわれています。南国情緒あふれた色彩豊かな美しさの中に、諸外国を統治していたフランスのナショナリティが象徴的に表現されていました。


    手前 フランソワ・ポンポン《シロクマ》
    第一次大戦により惨禍を受けた野生動物を保護しようと、植民地からたくさんの動物が運ばれてきました。それは近代動物園の始まりでもあり、フランソワ・ポンポンをはじめとした動物彫刻家たちは動物園での観察が制作の参考になっていたそうです。

    今まで、デザインの一形式としてアール・デコを捉えていたのですが、今回の展示からその着想の中にエキゾティックという重要なキーワードがあったことを学べました。

    第一次世界大戦の傷跡や植民地との関係が、政治の世界だけでなく文化へも大きな影響を与えていたことが分かり、アール・デコとは何だったのかという深い理解につながりました。

    都心の庭園の中にそこだけ時が止まったように佇む旧朝香宮邸で、異国情緒あふれるアール・デコの世界に浸れる素敵な展示でした。

    会場東京都庭園美術館
    開催期間2018年10月6日(土)〜 2019年1月14日(月・祝)
    休館日毎月第2・第4水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始
    開館時間10:00~18:00、夜間開館(11/23・11/24・11/30・12/1・12/7・12/8)は20:00まで(いずれも、入館は閉館30分前まで)
    所在地東京都港区白金台5-21-9
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
    HP : http://www.teien-art-museum.ne.jp/
    料金一般 1,200円、大学生(専修・各種専門学校含む) 960円、中学生・高校生 600円、65歳以上 600円
    展覧会詳細へ 「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」 詳細情報
    エリアレポーターのご紹介
    松田佳子 松田佳子
    湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。

    エリアレポーター募集中!
    あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
    会場
    東京都庭園美術館
    会期
    2018年10月6日(土)〜 2019年1月14日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00-18:00 (入館は17:30まで)
    休館日
    第2・第4水曜日(10/10、10/24、11/14、11/28、12/12、12/26、1/9)および年末年始(12/28-1/4)
    住所
    〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.teien-art-museum.ne.jp
    料金
    一般 1,200(960)円 / 大学生(専修・各種専門学校含む) 960(760)円 / 中学生・高校生 600(480)円 / 65歳以上 600(480)円

    ※( )内は前売券及び20名以上の団体料金
    ※小学生以下および都内在住在学の中学生は無料
    ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者一名は無料
    ※教育活動として教師が引率する都内の小中・高校生および教師は無料(事前申請が必要。公式サイトをご覧ください)
    展覧会詳細 東京都庭園美術館「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    (公財)サントリー芸術財団 サントリー美術館 職員(運営担当)募集 [サントリー美術館]
    東京都
    読売新聞東京本社事業局 中途採用者募集! [読売新聞東京本社(大手町)]
    東京都
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    人と防災未来センター 震災資料専門員(会計年度雇用職員)の募集 [人と防災未来センター 資料室]
    兵庫県
    展覧会ランキング
    1
    大阪中之島美術館 | 大阪府
    没後50年 福田平八郎展
    もうすぐ終了[あと8日]
    2024年3月9日(土)〜5月6日(月)
    2
    東京オペラシティ アートギャラリー | 東京都
    宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO
    開催中[あと49日]
    2024年4月11日(木)〜6月16日(日)
    3
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    もうすぐ終了[あと14日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    4
    佐川美術館 | 滋賀県
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと42日]
    2024年3月30日(土)〜6月9日(日)
    5
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと42日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)