横浜美術館で開催されている、開館30周年を記念した展覧会は、質、量、内容のどれをとっても圧倒されるものでした。
通常は企画展、コレクション展とに分かれて使用される展示室をフルに使い、日本画、洋画、版画、彫刻、写真に映像など400点以上のコレクションを、7章構成で展示しています。
そのうち、4人のゲスト・アーティストと学芸員の方が協同で創り上げた展示室は、アーティストの作品とコレクション作品との取り合わせの妙により、展示に相乗効果を与えていました。
ゲスト・アーティストの1人、淺井裕介さん。
今回のために制作された《いのちの木》は、円形の展示室の壁面をぐるっと囲むように描かれていました。
淺井裕介《いのちの木》2019年(展示風景) 土、ペンキ、アクリルレジン、水、板
《いのちの木》部分
そして、ミロ、シャガール、駒井哲郎、武井武雄といった所蔵品の中から、植物、動物、神話、夢といったキーワードで選ばれた作品が、淺井さんの絵の一部であるかのように、縦横無尽に配置されていました。
左)水船六州《牧神》1973年 多色木版/中)マックス・エルンスト《子供のミネルヴァ》1956年 油彩、カンヴァス/右)駒井哲郎《笑う幼児》1973年 アクアチント
淺井さんが描いたものを1つ1つ観ていけば、無邪気で可愛らしいものも多いのですが、全体ではプリミティブで力強いエネルギーに満ちていて、見守られているかのような感覚になりました。
また、もの派(木、石などをほぼ未加工のまま組み合わせ提示)の菅木志雄さんの『放囲空』は、コンクリートブロックと石を組み合わせた作品です。
コンクリートブロックに乗せられた石の質量が不思議と軽く感じました。
菅木志雄《放囲空》2018/2019年(展示風景) 石、セメントブロック
菅さんにとって「つくる」とは、『すべてのものは、すでに在るのだ』。
その言葉から作品タイトルを読むと、コンクリートで区切られた内部だけでなく、その外側も含めた空間全体が作品なのでは?と思えてきました。
そこで、『放囲空』を囲む、菅さんが選んだという所蔵品に目を向けると、金属なのに重さを感じさせない作品だったり、ヌケ感のある作品だったりを選ばれていて、ご自身の作品とメタ構造になっているようにも感じられました。
ウラジーミル・タトリン《コーナー・反レリーフ》1915年(1979年再制作) 鉄、アルミニウム、亜鉛、他
その他、女の情念と怖さが引き立つ束芋さん、シュルレアリスムの所蔵作品の豊富さを堪能出来る今津景さんとの展示室も見逃せません。
今津景《Repatriation》2015年(展示風景) 油彩、カンヴァス
もちろん、その他の展示室もバラエティに富み、新たな見方で作品を堪能することができました。
ルネ・マグリット《王様の美術館》1957-58年 油彩、カンヴァス
来館するたびにお気に入りの作品が見つかり、そこから興味も世界も拡がります。
コレクションの魅力が最大限に引き出された、横浜美術館をまるごと楽しめる展示でした。
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