中之島香雪美術館 「交流の軌跡―初期洋風画から輸出漆器まで」
撮影・文 [エリアレポーター]
白川瑞穂 / 2019年10月11日
朝日新聞の創業者、数寄者でもあった村山龍平のコレクションを元に、2018年開館した中之島香雪美術館。
これまでの展覧会は村山コレクションを中心に展開されてきましたが、今回は少し趣向の違う、興味深い展示です。
大航海時代の幕開けから西洋とアジアの交流が始まり、日本は新しい世界や文化に対して時には開き時には閉じて、共に影響し合い発展してきたことはご存知の通りです。
キリスト教の布教にともない、日本人が聖画を西洋絵画の技法を用いて真似て描いた初期洋風画には、遠近法や陰影の表現などと同時に、古典的な日本画の技法も使って伝統的な岩絵具で描かれ、「和洋折衷」のはしりとも言える独特の世界観を持っています。
出典元の作品と比較すると、忠実に模倣しようとしたことがうかがえます。
「レパント戦闘図・世界地図屏風」 上:右隻、下:左隻 六曲一双 重要文化財 江戸時代初期 17世紀初期 香雪美術館
江戸時代中期、日本が鎖国を行なっていた間に開かれていたオランダとの交流の中で、学術書として入ってきた蘭書の挿絵を原図として、洋風画はまた新たな展開を見せます。
江戸絵画にも影響を与えた博物書、活版技術のおかげで世界中に広まったイソップ物語など。
特に幅広い画風に貪欲にチャレンジし高い評価を得た江戸時代の代表的な洋風画家、司馬江漢(しばこうかん)の作品がこの時代のものと思えないほどヨーロッパ的で目を引きます。
最終章には、日本が桃山~江戸時代にかけて海外へ輸出し、人気を博した蒔絵の漆器が展示されています。
輸出漆器といえば明治以降、超絶技巧として花開いた蒔絵を彷彿とさせますが、また違った独特の和洋折衷、西洋の写真技術と日本の高い漆芸技術の見事なコラボレーションを見ることができます。
表面と裏面で異なるデザインが見られる作品もありますので、ぜひ裏面もお見逃しなく!
長崎風物図螺鈿箱 一合 長崎歴史文化博物館 江戸〜明治時代 19世紀
日本と西洋、印象派や浮世絵など、大きな影響を及ぼしあって生まれた作品は他にも数多くありますが、異文化への憧れ、ともに共鳴して生み出される新しい文化の素晴らしさをあらためて実感する展覧会でした。
前期、後期で展示替えもありますので、今回見られなかった作品もぜひ拝見したいと思います。
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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