アーツ・アンド・クラフツ、バウハウス、ミッドセンチュリーなどに代表されるモダンデザインは、各国の暮らしに合わせて発展しました。
本展では、1930年代~1960年代の日本で、モダンデザインを通して人々の暮らしが豊かになるよう夢見た7人の建築家・工芸家に焦点を当てています。
その7人(ブルーノ・タウト、井上房一郎、アントニン&ノエミ・レーモンド、剣持勇、ジョージ・ナカシマ、イサム・ノグチ)を5組に分けた5章構成の展示です。
彼らはそれぞれ、指導者と教え子、制作協力など互いに交流がありました。
会場入口手前の映像コーナーでは、相関関係はもちろん、各人のトピックが年代順に説明された映像を見ることができます。
この後の展示がぐっと理解しやすくなり、関連建築の映像美も楽しめますので、先に見ておくことをおすすめします。
展示室に入ってまず驚いたのが、木の什器とほのかに漂う木の香りです。
数寄屋造りを彷彿とさせる柱・梁・床で構成された展示室と、日本の生活様式に馴染むように考慮されたモダンデザインの家具とが調和した空間でした。
展示風景
井上の家具工芸店「ミラテス」銀座店では、竹や漆など手工芸品の素材や技法を活かしてタウトがデザインした椅子や生活用品が販売されました。
内装や包装紙、看板までもタウトが手掛けたとのことですが、本業が建築家であることを忘れそうなほどおしゃれなデザインです。
第1章 展示風景
日本で設計した「旧日向別邸」の様子が家具と共に再現されていました。
第1章 展示風景
一方、井上の「ミラテス」軽井沢店に訪れたことから親交を持ったのが、アントニン&ノエミ・レーモンド夫妻です。
日本の伝統建築の要素を取り入れたアントニンの設計と、ノエミのインテリアデザインによる住宅は、自然素材を多用した優しく開放的な空間が印象的でした。
第2章 展示風景
タウトの指導を受けた剣持は独立後、日本に昔からある藤や木材などの素材技法を用いながらも現代的なデザインとなる「ジャパニーズ・モダン」を提唱しました。
第3章 展示風景
レーモンド建築事務所で現場監督を勤め、後に家具職人に転向したのが、ナカシマです。
ノエミがデザインし、ナカシマが制作した椅子を含む木工製品が並ぶ様は圧巻です。
第4章 展示風景
ノグチもまた、レーモンドから庭園設計を任されるなど協働しています。来日中、岐阜提灯から発想を得て、和紙と竹による照明彫刻のあかりシリーズが生まれました。
第5章 展示風景
暮らしを豊かにするために、単なる大量生産ではなく、質の良い工芸品を量産化しようと目指していた人達がいたことが知れました。
多少品質が劣っていても安ければ良いという現代の風潮は、彼らが目指した世界とは真逆に突き進んでいるようで心が痛みます。
自分にとっての豊かな暮らしについて、再考するきっかけになるのではないでしょうか。
エリアレポーター募集中!あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?