東京都庭園美術館では、「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」が開催されています。
東京都庭園美術館と言えば、1925年にパリで開催された現代装飾美術産業美術国際博覧会(通称:アール・デコ博覧会)を訪問し、感銘を受けた朝香宮ご夫妻がアール・デコ様式の室内装飾にこだわって建てられた旧朝香宮邸を使用しており、ラリックのシャンデリアや特注のガラスレリーフ扉など空間と一体となった作品を見ることができます。
また、北澤美術館は世界屈指のガラス・コレクションで知られ、ラリックの作品も多くの優品を所蔵しているため、今回の企画展はラリック好きにはたまらないコラボレーションとなっています。
展示は本館と新館での2章構成です。
第1章の本館では、薄いカーテン越しの自然光の下で作品を鑑賞することができます。
展示風景(大客室)、旧朝香宮邸大客室シャンデリア《ブカレスト》 東京都庭園美術館蔵、花瓶《菊に組紐文様》1912年 北澤美術館蔵 ほか
ガラスの厚さや後ろからの光の当たり具合によってオパールの様に見えるオパルセント・ガラスは、特に色合いが引き立って見えました。
花瓶《バッカスの巫女》1927年 北澤美術館蔵
展示構成は、食堂にはテーブルウェア、書斎にはインク壺や印章、妃殿下寝室にはアクセサリーと化粧道具といった具合に、各部屋に関連した作品が多く配され、当時の面影に浸ることができます。
展示風景(大食堂)テーブルセッティングの再現
また、ラリックは独自のガラス成形法・加工法を駆使した作品が多く、技術の高さに裏打ちされた造形力にも驚きました。
ジュエリー制作で培った腕を活かして金型を作り、成形を工夫することで細かい表現を可能にした香水瓶。
奥から時計回りに、香水瓶《カーネーション》1912年、香水瓶《二人の人物、小像のある栓》1912年、香水瓶《牧歌》コティ社 1911年、香水瓶《シダ》あるいは《女性の胸像》1912年、すべて北澤美術館蔵
本体を作り、後から取っ手をつけるのが一般的だったのに対し、同時プレス成形することでデザインの一部に溶け込ませた花瓶。
花瓶《ナディカ》1930年 北澤美術館蔵
シール・ペルデュ(蝋型鋳造法)をガラスに応用することで可能になった、上顧客向けの繊細な一点物もありました。
シール・ペルデュ蓋付花瓶《バラ》1921年 北澤美術館蔵
新館 第2章では、パリでアール・デコが流行したのと同時代の大正・昭和初期に日本にもたらされたラリック作品をはじめ、アール・デコ博覧会関連の作品を当時の映像や資料を交えて展示されています。
立像《噴水の女神、メリト》1924年 北澤美術館蔵
正面玄関ガラスレリーフ扉のデザイン画もありました。デザイン画に書かれたラリックから工房への指示を読んでから実物を見ると、左隣の第一応接室に展示の妙が待ち受けていますので、お見逃しなく。
立像《両手を掲げた大きな裸婦》1921年 北澤美術館蔵、参考(ガラスへの反射像):旧朝香宮邸正面玄関ガラスレリーフ扉 1933年 東京都庭園美術館蔵
日没の前後、刻一刻と変化していく自然光によって、同じ作品でも異なる表情を見ることができ、非日常の贅沢な空間を愉しむことができました。
エリアレポーター募集中!あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?