昨年、東京で開催され45万名の来場者を記録したゴッホ展が関西で開催中です。
兵庫県立美術館では、2002年の現在の場所への移転を記念した展覧会以来のゴッホ展とのこと。
ゴッホの作品を日本で見る機会は少なくもないのですが、この展覧会はゴッホのルーツともいえるオランダのハーグ派の作品を紹介し、ゴッホの原点に迫っていること、その後にゴッホが大きな影響を受けた印象派の作品も同時に並べることで、ゴッホが自らのスタイルを確立した足跡を辿っている大変貴重な機会だと思います。
世界で最も有名な画家の1人であるゴッホが、本格的な絵画の教育を受けたわけではなく独学に近い形で技術を身につけたというのは意外にも知られていない事実ではないでしょうか。 縁のあったハーグ派の画家から絵を習い、同時代に活動していた画家たちと切磋琢磨する中で、ゴッホは基本的な手法や姿勢を学びました。
ゴッホがゴッホになる前の時代の作品は、荒削りではありながら、葛藤や情熱を感じられるものになっています。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々(部分)》 1885年4-5月 リトグラフ(インク・紙) ハーグ美術館 ©️Kunstmuseum Den Haag
絵画の基本と大作にも取り組める自信を得たゴッホはパリに出て、印象派に出会います。
ゴッホの絵の特徴である絵具の重ね塗りや鮮やかな色彩など、独自の作風を確立していきました。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《花瓶の花》 1886年夏、パリ 油彩、カンヴァス ハーグ美術館 ©️Kunstmuseum Den Haag
ゴッホの代表的作品ともいえる、7年ぶりの来日となった《糸杉》は亡くなる1年前に描かれた作品です。
渦巻きそびえ立つ緑がともするとゴッホの狂気を表しているのでは、と恐る恐る近付いて眺めますと、この作品に限らないのですが、実に緻密な筆致で丹念に仕上げられた作品であることが見てとれます。
近くでじっくりと鑑賞したい作品のひとつです。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス メトロポリタン美術館 Image copyright ©️Metropoiitan Museum of Art Image source: Art Resource, NY
日本の芸術に影響を受けた印象派、その日本に憧れて南仏に移り住んだゴッホはそこで短い生涯を閉じます。
もしゴッホが日本に来る機会があったのなら、一体どんな作品がその後に生まれたのでしょう。
どことなく日本美術を想起させる作品も描いたゴッホだから、日本でも熱烈に支持され続けているのかもしれません。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《夕暮れの松の木》 1889年12月 油彩、カンヴァス クレラー=ミュラー美術館 ©️Collection Kroller-Muller Museum,Otterlo, The Netherlands
たった10年という短い芸術活動の期間にゴッホが生み出した作品が心に迫ってくる展覧会です。
こんなゴッホもあったのか、という気づきが多いのは、ハーグ派、印象派という側面から見ているだけだはなく、日本ではあまりお目にかかれないイスラエルやアイルランドといった国の美術館から出展されている作品が多いこともあるでしょう。
きっとゴッホが好きになる。ゴッホが好きな方、割とゴッホの作品は見ているよ、という方でも、知らなかったゴッホの顔に出会える、そんな展覧会です。
会期後半はさらに混雑が予想されますので、早めのお出かけがおすすめです。
海辺に佇む、安藤忠雄氏の素晴らしい建築の館へ、ぜひゴッホに会いにいらしてください。
エリアレポーターのご紹介 | 白川瑞穂 関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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