ルオーと日本
パナソニック汐留美術館で「ルオーと日本」が開催されています。
ルオーが日本に紹介されて約100年。
その後、様々な画家に影響を与え、日本でも根強い人気があります。
黒い輪郭線と、厚塗りの油彩が特徴のルオーは、日本絵画とは対極です。
日本人はどこに惹かれたのでしょうか?
ルオーも、日本の影響を受けていた痕跡がみつかります。
響き合う線と精神
入口のシンプルなパネルを通ったあと、最初に飛び込んでくるのは、白隠の《達磨図》
ルオーと達磨?一瞬戸惑います。
しばらく佇んでいると、白隠の墨蹟と、ルオーの輪郭線が重なり出します。
ルオーの輪郭線は、日本の書画の影響を受けていた!?
フランスでは、ジャポニスムの影響を耳にしますが、ルオーが日本の影響を受けたとは聞きません。
アトリエのルオー Photo ©YvonneChevalier
ルオーと日本の水墨画を、並べた展示に、相互影響はないと言います。
ルオー芸術の中に「日本的なるもの」をみつけて欲しいという狙い。
観る人が自由に比較するためのプロローグだったのです。
狙いにすっかりはまった感があります。
ルオー作品から感じた「日本的なもの」をご紹介します。
ルオーが書いた武者絵
ジョルジュ・ルオー《日本の武士(武者絵)》 1928年頃 墨、パステル、精油で溶いた油彩/紙 個人蔵 ©ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2019 E3556
墨で描かれた馬や武士。
力強く踏みしめる黒い脚、一方、武士はかすれた素早いタッチで描かれます。
馬にかかる武士の脚は、細く繊細で軽やか。和筆のあとを感じます。
実はこの絵、自分の絵を集めている福島繁太郎に会うための口実に描き訪問ました。
ロビーの映像で紹介されています。
武士を描く墨の黒い線と、ルオーの輪郭線が重なります。1928年(57歳)頃の作品です。
日本的なるものの発見
ジョルジュ・ルオー 《ピエロ》1925年 油彩/紙 個人蔵(ギャルリーためなが協力)©ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2019 E3556
1925年作、前出の武士の3年前の作品。
大正末期から昭和の始め、多くの日本人芸術家が感銘をうけたピエロです。
ルオーは毎夕、福島の家で制作に励みました。
この太い輪郭線は「“えい”と力を入れて描く」と語っていたそう。
太く力強い線、はらいやにじみ、かすれ。書画の筆致に見えてくるから不思議です。
離れて見ると背景は垂らし込みのように感じました。
背景の青は透明感が感じられ、山水画の水面を見ている錯覚に。
白地に赤から連想されるもの・・・・
自由に鑑賞して感じた「日本的なるもの」です。
ルオーが閉じ込めたもの
3章 会場風景
ルオー作品の神髄は、自由に描いた線の表現と、深い精神性と言われます。
この展覧会では、過去に見たルオーとは全く違う表情を見せます。
黒い輪郭が墨蹟に、厚く塗られた色彩の奥深くに潜んでいた光が漏れ出します。
それはこれまでは見えなかった光です。
この光こそが、国や時代を問わず、内面と対峙した時に見える光。
日本人の心と共鳴する光なのだと思われます。
マコト フジムラ《二子玉川園》 1989年 金、銀、墨、顔料/雲肌麻紙 東京藝術大学
日系アメリカ人の現代美術家による、岩絵具を100回重ねた日本画。
コロナ禍で閉塞した今だからこそ、自己と向き合い対話する。
重ねた色彩の中に閉じ込められた光が捉えやすいのかもしれません。
それは、場所や時間、宗教や信条の壁も超えて連なるルオーの祈りのようでもあります。
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