実業家としての活動のかたわら、長年にわたって美術品を蒐集してきた畠山一清。「即翁」と号して能楽と茶の湯を嗜んだこともあって、そのコレクションを受け継いだ
畠山記念館は「茶の湯の美術館」として親しまれています。
畠山記念館は、2014年でちょうど開館50周年。毎年、四季ごとに4回行われている展覧会も、2014年度は開館50周年記念として開催されています。締めくくりの本展(冬季展)のテーマは、人気の「琳派」。本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳・乾山、酒井抱一、鈴木其一まで、豪華な琳派コレクションが一堂に会しました。
畠山一清自身が発案した建物は、緑豊かな庭園の先に。1階には平櫛田中による畠山一清像、展示室は2階ですまずは、重要文化財《金銀泥四季草花下絵古今集和歌巻》からご紹介しましょう。本阿弥光悦と俵屋宗達が共同制作した金銀泥下絵和歌巻は、
京都国立博物館の重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》などが知られていますが、こちらも極めて質が高い逸品です。
下絵の宗達は、線を描かずに濃淡だけで描く「没骨法(もっこつほう)」で、四季を表現。光悦は古今和歌集から十九首の和歌を選び、絶妙なリズムで文字を配しました(会期中に巻替えがあります)
重要文化財《金銀泥四季草花下絵古今集和歌巻》本阿弥光悦書・俵屋宗達下絵琳派といえば、装飾性豊かな絵画が頭に浮かびますが、ここは「茶の湯の美術館」。茶道具も琳派を揃えました。
《共筒茶杓 銘 寿》は、ちょっと珍しい尾形光琳の茶杓。茶杓を入れる筒には、「寿」の銘の下に霊芝、右側面には蝙蝠(こうもり)の絵。霊芝と蝙蝠は、共に吉祥の文様です。左側面には「法橋光琳」の落款も見られます。
《共筒茶杓 銘 寿》尾形光琳作展覧会メインビジュアルは、重要文化財《赤楽茶碗 銘 雪峯》。本阿弥光悦が手掛けたもので、「光悦七種」の一つに数えられる茶椀です。
口縁から高台にかけての金粉漆の繕いは豪快で、まるで稲妻のよう。「雪峯」の銘は、上部の白釉を白雪に、火割れを雪解けの渓流に見立てて、光悦自ら命銘したといわれます。箱書も本阿弥光悦です。
重要文化財《赤楽茶碗 銘 雪峯》本阿弥光悦作会期中通して出品数は51点と決して規模は大きくありませんが、重文をはじめ優品がずらり。各地で続々と開催される琳派展の予習としても、お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月5日 ]※2月14日(土)からは《次郎左衛門雛》も特別展示されます。