2005年から「水と生きる SUNTORY」をグループのコーポレートメッセージとして掲げている
サントリー美術館にはぴったりの展覧会。まず第1章は、水の神秘的な力にまつわる作例が紹介されます。
最初の展示品は、流水を象った文様が刻まれた《流水文銅鐸》。早くも弥生時代の農耕祭器に、水への信仰が現れています。
1章奥の重要文化財《日月山水図屏風》は、展覧会の目玉のひとつ。大阪の金剛寺で灌頂儀式(修行僧などが香水を頭に注ぐ儀式)に使用されたと伝わり、水のうねりがダイナミックに描かれています。
第1章「水の力」第2章は「水の神仏」。水を神仏として祀った例としてまずあげられるのが、仏教の弁才天。現在では七福神の一尊ですが、もとは古代インドの河を神格化した存在でした。
弁才天の頭頂部にみられる、老翁の顔を持つ白蛇は、宇賀神。こちらは日本に古来から伝わる神で、習合して宇賀弁才天になりました。
近世になると宇賀神は独立。本展でも高さ52cmの堂々たる宇賀神像(大阪・本山寺蔵)が、1月7日から出展されます。図録で見ると相当なインパクトで、お披露目が楽しみです。
第2章「水の神仏」展覧会のメインといえるのが、次の第3章。水に対する祈りの諸相が紹介されます。
「水への信仰」としてすぐにイメージできるのが、祈雨(雨乞い)。五穀豊穣のために龍神(雨を司る神)に風雨の順行を祈願するのは、国家の安泰に繋がる重要事項でした。
漆塗の大きな箱は、龍が持つ宝珠(龍珠)を納めたと伝わる《春日龍珠箱》。二重になっている内箱は、四面すべてが波濤の模様。水の神の力を現すにふさわしい、力強い意匠です。
第3章「水に祈りて」さらに会場は、豊かな水とともにある理想郷を仏画や絵巻などで紹介する第4章「水の理想郷」、吉祥の意味合いの中で水流や滝の姿を取りいれた第5章「「水と吉祥」、水とともに豊かに生きてきた人々の姿を屏風から読み取る第6章「水の聖地」と続きます。
特に最後の屏風は、楽しげな人々の姿はかなり細かな描写です。お持ちでしたらミュージアムスコープをお忘れなく。
第4章~第6章年末年始を挟む展覧会ですが、1月5日(火)だけは「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」。小中学生とその保護者を対象に、さまざまなイベントが開催されます。しかも入館料は無料!若いパパママが羨ましいです。
サントリー美術館での展示は、2016年2月7日(日)まで。4月9日(土)~5月29日(日)に京都の龍谷大学龍谷ミュージアムに巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年12月15日 ]※会期中に展示替えがあります。