年に一度のペースで、京都における美術教育を紹介する企画展を開催している
京都府立堂本印象美術館。今年は京都市立芸術大学をとりあげています。
明治維新により、首都の座を東京に奪われた京都。文化面での優位性を守るために取った施策が、美術家を養成する学校の設立でした。
こうして誕生したのが、京都府画学校です。京都市立美術工芸学校(美工)など何度かの改名を経て、1909年に上級学校として京都市立絵画専門学校が設立されました。地元の京都市民が親しみをこめて「絵専」(かいせん)と呼ぶこの学校が、現在の京都市立芸術大学です。
堂本印象自身が、絵専の卒業生であり教員でした。展示室に至る通路で、堂本印象の学生時代・教員時代の写生や、堂本印象が同校に寄贈した古美術品が展示されています。
堂本印象の作品など展覧会は、2月6日から後期展がスタート。教員ゆかりの作品を紹介した前期展に続き、後期展では日本画卒業生に焦点を当てています。
京都画壇の雄・竹内栖鳳の尽力で設立された絵専。教員も日本画の重鎮が顔を揃え、彼らの薫陶を受けた若い才能が次々に巣立っていきました。
絵専一期の同期生である村上華岳と土田麦僊は、若くして文展に入選。卒業生には文化勲章受章者も多く、後期展では徳岡神泉や小野竹喬の作品が展示されています。
展示室で紹介されているのは、絵専の卒業制作などの大作が中心ここでは才能に恵まれながらも、若くして亡くなった二名をご紹介します。
ひとり目は岡本神草。退廃的な大正デカダンスの作風で人気を博しましたが、39歳で亡くなりました。本展で展示されているのは、絵専の卒業作品《口紅》。第一回国画創作協会展にも出品され、土田麦僊に絶賛されました。舞妓の姿態と鮮やかな着物の柄が印象的です。
もうひとりは稲垣仲静、26歳で急逝しました。同じくデカダンな人物画を得意としましたが、今回の作品は《豹》。それぞれの豹は写実的ですが、3頭の構成は装飾的。画面を覆う無数の豹柄が、強いインパクトを与えます。
岡本神草《口紅》と、稲垣仲静《豹》地域の文化への愛着はどこでもありますが、京都の人々にとってその想いはひとしお。その継承者である京都市立芸術大学には、強い愛情と誇りを感じている京都の人が多いと聞きました。ちなみに森村泰昌さん、名和晃平さん、ヤノベケンジさん、やなぎみわさんらも卒業生である事を補足しておきます。
最後に、
京都府立堂本印象美術館について。静謐な日本画から大胆な抽象画へと、スタイルを大きく変えながら活躍した堂本印象。美術館は堂本印象が75歳の時に、自邸の向かいに建設したものです。
堂本印象美術館印象的な外観はもちろん、館内各所の装飾は全て堂本印象が手がけました。いわば館全体が堂本印象の作品ともいえます。
京都駅からはバスで約30分。ちょうど金閣寺と龍安寺の中間地点で、両寺からはそれぞれ徒歩10分ほどです。観光とあわせてお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月5日 ]■堂本印象美術館 美を創る に関するツイート