広大な国土と長い歴史を有する中国。時代の違いによる手法の変化に加え、それぞれの生産地が持つ特性もあって、姿・形・色・文様などが異なる多彩な焼き物が作られてきました。
展覧会では古代から清時代までの焼き物を紹介。実際に多くの作品を見せる事でその違いを感じていただければ…と、出展総数は121件。
根津美術館にしては異例といえるボリュームたっぷりの展覧会となりました。
会場とても全部はご紹介できないので、ポイントを絞ってご案内いたします。
展覧会は紅色の土で焼かれた紀元前6000年頃の土器からスタート。釉薬は約4000年前に自然釉が生まれ、約3500年前には安定した釉薬(灰釉)を用いた灰釉陶器が作られるようになります。
三国時代から唐時代には、さまざまな施釉陶器が誕生。越州窯青磁、白釉陶、三彩釉などが紹介されています。
古代の土器から三国時代・唐時代まで中国の陶磁器に詳しくない方でも、景徳鎮(けいとくちん)窯の名前は聞いたことがあると思います。華南の景徳鎮では古くから陶磁器が作られており、その最盛期は明・清時代。この時期には民窯のほかに、皇帝と宮廷で使う陶磁器を生産する官窯も設置されていました(明時代が御器廠:ごきしょう、清時代は御窯廠:ぎょようしょう)。
官窯で生産された製品は厳密な検査を受け、不良品は破棄。厳格なルールのもとで、景徳鎮のブランド力が維持されていたのです。
「景徳鎮窯と明・清時代の陶磁器」唐物(からもの)は、日本では特別な存在。12~13世紀に禅宗とともに喫茶の文化が中国から入ってくると、中国で作られた道具は唐物として珍重されるようになります。
室町時代から安土桃山時代になると、茶壺や天目茶碗などの唐物が政治的な道具に使われるほどに。織田信長が配下の武将への論功行賞として唐物茶器を用いた事はよく知られています。
「唐物の世界」他にも定窯・耀州窯・磁州窯などの宋時代の陶磁器、元時代に生まれた青花磁器、日本に伝世した明時代の金襴手・呉州赤絵なども展示。通して見ることで、中国陶磁器の大まかな流れが把握いたたけると思います。会場は展示室1だけですが、解説もたっぷりありますので、時間をとってじっくりとお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年9月14日 ]■中国陶磁勉強会 に関するツイート