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    レポート
    六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信
    サントリー美術館 | 東京都
    集団制作を生んだ「画体」の確立
    狩野派の二代目・狩野元信(1477?-1559)。狩野派始祖の父・正信や、「唐獅子図」「洛中洛外図」の孫・永徳に比べると、絵師としての知名度は高くないかもしれません。実はその画技も、狩野派を「天下画工の長(おさ)」にしたと言われた実力者。画業を振り返る展覧会が、サントリー美術館で開催中です。
    (奥)《養蚕機織図屛風》伝 狩野元信 根津美術館[展示期間:9/16~9/25] / (手前)《芦雁図扇面》狩野正信 東京国立博物館[展示期間:9/16~10/23]
    (左奥から)京都市指定有形文化財《浄瓶踢倒図》狩野元信 京都・龍安寺[展示期間:9/16~10/9] / 重要文化財《四季花鳥図(旧大仙院方丈障壁画)》狩野元信 京都・大仙院[展示期間:9/16~10/2、10/18~11/5]
    (左奥から)《真山水図》狩野元信 京都国立博物館[展示期間:9/16~10/9] / 重要文化財《山水図》狩野正信 個人蔵[展示期間:9/16~10/9] / 重要文化財《竹石白鶴図屛風》伝 狩野正信 京都・真珠庵[展示期間:9/16~9/25]
    (左から)《牧牛図》「右都御史」印 栃木県立博物館 / 《蕪菁図》「元信」印、策彦周良賛 栃木県立博物館[ともに展示期間:9/16~10/9、10/25~11/5]
    (左奥から)《群雁図屛風》「元信」印 サントリー美術館 / 《四季花鳥図屛風》「元信」印 一般財団法人 太陽コレクション[ともに展示期間:9/16~10/9]
    (手前から)《叭々鳥図扇面》「元信」印 個人蔵[展示期間:9/16~10/9] / 《破墨山水図団扇》「玄也」印 個人蔵[展示期間:9/16~9/25]
    (左奥から)《花鳥図屛風下絵》狩野元信 個人蔵[全期間展示] / 《酒飯論絵巻》文化庁[展示期間:9/16~10/9]
    (左から)《松下渡唐天神像》狩野元信 京都国立博物館 / 《神農図》「元信」印、月舟寿桂賛 京都国立博物館 / 《孔門十哲図》「元信」印 個人蔵[3点とも展示期間:9/16~10/9]
    (左から)《鄧林宗棟像》狩野元信筆、鄧林宗棟自賛 京都・龍安寺[全期間展示] / 重要文化財《細川澄元像》狩野元信筆、景徐周麟賛 永青文庫[展示期間:9/16~10/9]
    室町時代から幕末まで約400年に渡って日本画壇の中心にあった狩野派。始祖・正信の時代には傍流であり、中央に押し上げたのはまぎれもなく元信の功績です。

    絵師としての元信の実力を最初に感じてもらうため、まずは元信と工房による障壁画から。静・動を使い分け、奥行きがある巧みな描写は、掛軸に改装された今でも響いてきます。

    続いて、中国の名家たちの作品。足利将軍家が蒐集した中国絵画は人々の憧れであり、漢画の規範でした。後に元信は、彼らの作品を参考に三種の「画体」を創る事となります。


    第1章「天下画工の長となる ― 障壁画の世界」、第2章「名家に倣う ― 人々が憧れた巨匠たち」

    元信の大きな功績が「画体」の確立。書道の楷書・行書・草書に倣い、緻密な構図と描線による「真体」、最も崩した描写である「草体」、そしてその中間にあたる「行体」を定めました。

    狩野派の絵師たちは「画体」を学ぶ事で技術を身につけ、集団制作が可能になりました。元信の経営センスが、狩野派を専門絵師集団に変えたのです。会場では作品のプレートに「画体」も表示されています。


    第3章「画体の確立 ― 真・行・草」

    「画体」は漢画からの創案ですが、元信はやまと絵の分野にも進出。人物はやまと絵、山水は漢画と、和漢双方の手法を用いた絵巻も展示されています。

    さらに正信や元信は、絵仏師が手掛けてきた仏画も描いています。華やかな色彩・世俗的な表情と、伝統的な仏画とは一線を画す作風です。

    集団制作体制・高い技術・幅広いジャンルと、絵師として全てを備えた元信。肖像画や奉納絵馬からは、元信がパトロンを増やしていった事も分かります。


    第4章「和漢を兼ねる」、第5章「信仰を描く」、第6章「パトロンの拡大」

    少なくとも江戸時代においては、歴代狩野派の最高峰は元信。永徳は「元信に勝るとも劣らない」と評され、その名声は明(中国)にまで及んでいました。

    それほどの存在でありながら、意外な事に「狩野元信」単独の展覧会は本展が初めて。かなり展示替えがありますので、お目当てがある方は事前に公式サイトの作品リストでご確認ください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年9月15日 ]


    料金一般当日:1,300円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■サントリー 狩野元信 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年9月16日(土)~11月5日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    休館日
    毎週火曜日、年末年始、展示替期間
    住所
    東京都港区赤坂9-7-4  東京ミッドタウン ガレリア3F
    電話 03-3479-8600
    公式サイト http://suntory.jp/SMA/
    料金
    一般 1,300(1,100)円/大学・高校生 1,000(800)円
    ※()内は前売料金
    ※中学生以下無料
    ※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
    展覧会詳細 六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信 詳細情報
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