1968年 激動の時代の芸術

ジャンルを横断、続く挑戦

世界各地で社会的な事件が勃発し、近代的な価値が問い直される事となった1968年は、20世紀の転換点として位置づけられます。日本の芸術表現にとっても重要な、この年に焦点を当てた展覧会が千葉市美術館で開催中です。

  • (左奥から)宇野亜喜良《天井桟敷「新宿版千一夜物語」ポスター》1968 ギャラリー360° / 宇野亜喜良《天井桟敷「星の王子さま」ポスター》1968 ギャラリー360° / 伊坂芳太郎《TBSラジオ「ヤングタウンシリーズ」ポスター》1970 三原宏元(ビリケン商会) / 伊坂芳太郎《虫プロダクション製作アニメラマ「クレオパトラ」ポスター》1970 三原宏元(ビリケン商会)
  • A1「1968年の社会と文化」 雑誌など
  • (左から)《日本宣伝美術会粉砕共闘 粉砕行動予定日ポスター》1969 堀浩哉 / 《「第19回日宣美」ポスター》1969 個人蔵
  • (左から)山下菊二《海を渡る捕虜服》1968 豊橋市美術博物館 / 粟津潔《ANTI-WAR AND LIBERATION》1968 日本画廊 / 横尾忠則《「戦争展」ポスター》1966 日本画廊
  • (左奥から)河口龍夫《無限空間におけるオブジェとイメージの相関関係又は8色の球体》1968 高松市美術館 / 高松次郎《遠近法の椅子とテーブル》1966-67 東京国立近代美術館
  • B3「日本万国博覧会」 (手前)四谷シモン《ルネ・マグリットの男》1970 三原宏元(ビリケン商会)
  • (左から)鈴木慶則《非在のタブロー(キリコによる)》1967 静岡県立美術館 / 飯田昭二《Half and Half》1968 静岡県立美術館
  • (左から)田名網敬一《P.B. GRAND PRIX》1968 作家蔵 NANZUKA 協力 / 横尾忠則《「THE TRIP 白昼の幻想」ポスター》1968 国立国際美術館
  • (左手前)菅木志雄《斜位相》1969 作家蔵 / (右奥)李禹煥《関係項》2018/1968 作家蔵 SCAI THE BATHHOUSE 協力

文化史の中でも言及される事が増えた1968年。昨年、国立歴史民俗博物館でも「1968年 -無数の問いの噴出の時代-」展が開催されました。

歴博では主に社会運動を取り上げたのに対し、千葉市美は芸術がテーマ。美術はもちろんですが、演劇・舞踏・映画・建築・デザイン・漫画などの周辺も掘り下げ、時代の表現を横断的に紹介していきます。

会場は4つのセクション、各章が2~5の小コーナーで分割されています。

1章「激動の1968年」は、時代の振り返りから。学生運動や三里塚闘争、ベトナム反戦運動の他、三億円事件、永山事件、金嬉老事件もこの年です。

社会運動は美術界にも飛び火し、多摩美の学生が美術家共闘会議(美共闘)を結成。「日宣美粉砕共闘」「草月フィルム・アート・フェスティバル粉砕共闘会議」など、権威とみなされた団体は攻撃されました。

続いて、2章「1968年の現代美術」。赤瀬川原平と針生一郎ら関係者の中で、ベトナム反戦と芸術の関係においてスタンスの違いが論戦を生んだのは「反戦と解放展」です。

テクノロジーを用いた環境芸術やインターメディアが盛んになり、その結実といえるのが日本万国博覧会。一方で、権力の象徴としての万博に反対する動き(反博)も発生しました。

第1会場


3章「領域を超える芸術」では、美術以外に言及。唐十郎「状況劇場」、寺山修司「天井桟敷」らによるアングラ演劇。舞踏の土方巽も注目を集めました。

横尾忠則、宇野亜喜良らにより、イラストレーションが広まったのもこの時代。つげ義春、林静一に代表される「月刊漫画ガロ」は、漫画の可能性を次の段階に進めました。

LSDの幻覚体験から生まれた「サイケデリック」は、この時代を象徴するワードのひとつです。イラストや美術だけでなく、大衆文化にも波及しました。会場では赤坂にあった伝説のディスコ「MUGEN」のライトショーが再現され、当時の雰囲気も楽しめます。

第4章は「新世代の台頭」。写真の世界では、この年に写真同人誌「プロヴォーク」が創刊。「アレ、ブレ、ボケ」の不鮮明で攻撃的な写真を発表したのは、森山大道や中平卓馬らです。

石や木など、素材をそのまま作品とする「もの派」が登場したのも1968年です。関根伸夫は野外彫刻展で、大地に円柱型の穴を開け、その隣に掘り起こした土を穴と同じかたちに固めて置いた作品《位相-大地》を発表。現代美術に新しい流れをつくりました。

第2会場


多彩な表現が生まれた時代ですが、全てが後に繋がったわけではなく、一過性に終わったものがあるのも事実。ただ、あらゆる分野で新しい挑戦が繰り返されていたのは、この時代ならではといえます。

千葉市美術館でスタート、北九州市立美術館分館(2018年12月1日~2019年1月27日)、静岡県立美術館(2019年2月10日~3月24日)に巡回します。

なお、1968年生まれの人は、通常1,200円の観覧料が500円になるという太っ腹サービスも実施中です(年齢を確認できる証明書をお持ちください)。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年9月26日 ]

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¥ 950

 

ミュージアムの詳細

展覧会の詳細

会期

2018年9月19日(水)~11月11日(日)