元寇で亡くなった人々を弔うために開創された、円覚寺。開山の無学祖元は、鎌倉幕府第8代執権の北条時宗の招請で、54歳の時に来日しました。
展覧会は、無学祖元の所用と伝えられる《開山箪笥》から。南宋・元時代の品々で、円覚寺の寺宝の中でも特別な存在です。盆や香合などが一括して重要文化財に指定されています。
イチオシの逸品を紹介する第2室には、重要文化財《青磁袴腰香炉》。南宋時代の浙江省龍泉窯では数多くの青磁が焼成され、日本では「砧青磁」と呼ばれて珍重されました。美しいこの香炉は滑らかな表面で歪みも無く、砧青磁を代表する名品です。
広い第4室には、仏像や墨蹟など。華厳禅と無学祖元について紹介されています。
華厳禅は、華厳教と禅が一体化して中国で生まれました。本尊は毘盧遮那(びるしゃな)仏。宝冠をかぶり、装身具を着けているのが特徴です。円覚寺は、日本初の本格的な華厳禅の寺院です。
日本に禅をもたらしたのは栄西ですが、この時期の禅僧は密教の僧でもあったため、純粋な禅を中国(南宋)から初めて伝えたのは、建長寺の開山・蘭渓道隆。その後を継いだのが、無学祖元です。
続いて、大陸文化との関わりについて。鎌倉時代は宋との交流が盛んだったため、仏教寺院も大陸から多くの影響を受けています。特に鎌倉は全国的に見ても、大陸からの影響が顕著に見られます。
最後の展示室では、円覚寺一派の各寺院に伝わる寺宝も展示されています。仏像のほか、無学祖元より法を嗣いだ高峰顕日、その弟子の夢窓疎石など禅僧の頂相彫刻。さらに、賢江祥啓、雪村周継、如水宗淵など「鎌倉派」と称される鎌倉の禅僧画家の作品が並びます。
実は、徳川幕府が開かれる前までは、日本橋界隈も円覚寺の所領でした。秀吉は家康に「円覚寺の所領には手を付けるな」と命じていたにも関わらず、家康に召し上げられてしまったという、因縁の場所での展覧会になりました。
会期中には座禅や法話、座談会などさまざまなプログラムも。展覧会限定の特別朱印もありますので、御朱印ガールも必見です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年4月19日 ]