1983年に「近世フランス絵画展」で開館した、東京富士美術館。ルーヴル美術館の絵画部長だったルネ・ユイグ氏(故人)の協力で実現したこの展覧会以降、東京富士美術館は何度もフランス絵画をテーマにした展覧会を開催するとともに、フランス絵画の収集にも力を注いできました。
今回は、あらためてフランス絵画の魅力を紹介する展覧会。多くの美術館から名画を集めるとともに、東京富士美術館蔵の代表作も含めて、フランス美術の流れを俯瞰します。
イタリアとネーデルラントという、ふたつの美術大国の間に位置するフランス。イタリアからは歴史画の叙述性を、北方からは写実的な描写力を取り入れ、17世紀に飛躍的に発展しました。
近代国家フランスを築いたルイ14世は、1648年に王立絵画彫刻アカデミーを創設。ニコラ・プッサンを理想として、シャルル・ル・ブランを中心に教育が実践されていきした。
アカデミーの絵画理論として有名なのが、画題の序列。古典文学や聖書を主題にした歴史画が頂点にあり、生命の無い静物画は最も下位に位置付けられました。
ル・ブランに次ぐ世代になると、色彩を重視する美術観が優勢になっていきます。ロココ美術の登場です。
アントワーヌ・ヴァトーは、富裕層で流行していた屋外の集いを、演劇の要素を取り入れて表現した「雅宴画」で一斉を風靡。恋や憧れなど、繊細な感情も絵画に取り入れました。
18世紀末になると、女性画家の活躍も目立つようになります。展覧会メインビジュアルである《ポリニャック公爵夫人》も、女性画家のヴィジェ・ルブランによる作品。彼女はマリー・アントワネットのお気に入りでした。
官能的なロココ美術には次第に批判が強まり、かわって台頭したのが新古典主義。ダヴィッドやアングルが、19世紀美術の中心を進んでいきます。
19世紀のアカデミーを代表する画家がウィリアム・ブグローやアレクサンドル・カバネルです。筆使いを残さない、大理石のような肌の表現は、後の時代になると批判的に「ポンピエ」と呼ばれるようになります。
西洋絵画の保守本流、フランス美術300年の流れを一気に楽しめる展覧会。メインビジュアルを含め3作品は撮影も可能です。東京展の後に、九州と大阪に巡回、会場と会期はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年10月3日 ]