インターネットミュージアム
美術館・博物館・イベント・展覧会 インターネットミュージアム
  インターネットミュージアム  >  エリアレポート  >  東京ステーションギャラリー「吉村芳生 超絶技巧を超えて」

東京ステーションギャラリー「吉村芳生 超絶技巧を超えて」

撮影・文 [エリアレポーター]白川瑞穂 / 2018年11月22日

故郷の山口県を中心に活躍し、2013年に亡くなった吉村芳生、ご存知でない方も多いのではないでしょうか。
明治を連想させる「超絶技巧」より「スーパーリアリズム」と英語で呼びたい、究極のリアリズムを追求した画家、今回の展覧会が中国・四国地方以外では初の個展となります。

吉村氏は広告のデザイナーとして代理店に勤務した後、版画を学んだ異色の経歴の持ち主。
初期の作品は既に、後年に繋がるような独特の作風でした。


ドローイング 金網 1977 鉛筆、紙 97.0×1686.7

この作品は金網の上に紙を重ね、一つひとつの網目を18000個、17メートル、70日かけて鉛筆で描写したもの。
繰り返しで同じ網目を描くのも、スキャンやコピー、写真を使う手もあったでしょう。
まるで毎日の何かの習慣を繰り返すように、あえて自分の手で繰り返し描くことが、もしかしたら技術を高め、精神を養う訓練として大切なプロセスだと感じていたのかもしれません。

こちらも後年の大きなテーマとなる、新聞を表現した作品です。


ドローイング 新聞 ジャパンタイムズ 1979-80 鉛筆、紙/ シルクスクリーン、紙/ 鉛筆・色鉛筆、紙56.0×42.5

紙に、刷り上がって間もない新聞を薄く転写し、鉛筆で写したもの。
離れて見ると新聞に見えますが、近づくと完全な写し描きではなく、文字の手書き感が認められます。

同じく、のちの自画像の習作かのような、365日毎日の自分の顔写真を鉛筆で描いたものや、


365日の自画像 1981.7.24-1982.7.23 1981-90 鉛筆、紙 各12.0×12.0 山口県立美術館

友達のスナップ写真を鉛筆描きしたもの。


友達シリーズ 1981 鉛筆、紙 19.0×15.0

「新聞は社会の肖像」と語った画家は、新聞シリーズと自画像シリーズを組み合わせた新シリーズに取り組みます。



新聞と自画像 2008.10.8 毎日新聞 2008 鉛筆・色鉛筆・水性ペン・墨・水彩、紙 146.0×109.1

新聞の一面を読んだ後の自分の表情を新聞に描き込み、その日の社会と自身を合わせて表現。
パリ留学中の一年間には、現地の新聞に1000枚以上、微妙に異なる日々の表情を描いていきます。



Self-portraits 1000 in Paris (パリの新聞と自画像)2011-12 鉛筆、新聞紙 各41.5×27.8

そして2011年の東日本大震災後、震災翌日から約1ヶ月間の新聞1100枚ほどに、シルクスクリーンで自画像を刷り込んだ作品を制作。


「3.11から」新聞と自画像 全8種(見・吁・光・阿・吽・失・共・叫)2011シルクスクリーン、新聞紙

激しく変化する表情から、画家の心情が伝わってきます。

展示後半のコーナーに集められた、ほとんどモノクロの作品を制作していた吉村が鮮やかな花を描いた作品は、同じ作家のものと思えないほど鮮烈な印象。



絶筆となったコスモス畑を描いた作品に至るまで、更なる新境地を開拓しようと試みていました。


コスモス(絶筆)2013 色鉛筆、紙 202.2×306.0

彼は、自らの制作活動を「誰にでも出来る単純作業」であると語っていたそうです。
もちろん、技術的にも忍耐的にも彼にしか出来ないことですが、自分の中にあるテーマを表現するよりも、淡々とコツコツと、日常を積み重ねていくように制作し続けることが彼のテーマだったのかもしれません。
壮大なテーマや圧倒的な超絶技巧は常に感動を与えてくれますが、現実を生きるわたし達に寄り沿い、繰り返し過ごしていく毎日に気づきを与えてくれる、そんな作品だと思います。



最近どうも感性が麻痺して鈍りがち。ちょっと毎日の生活に疲れている…そんな方にこそ、ご覧頂きたい展覧会です。
是非、東京駅へお出かけください。



会場東京ステーションギャラリー
開催期間2018年11月23日(金)~2019年1月20日(日)
休館日月曜日(ただし、12/24、1/14は開館)、12/25(火)、12/29(土)~1/1(火・祝)
開館時間10:00~18:00 ※金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
所在地東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前
03-3212-2485
HP : http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
料金一般 900円、高校・大学生 700円、中学生以下 無料
展覧会詳細へ 「吉村芳生 超絶技巧を超えて」詳細情報
エリアレポーターのご紹介
白川瑞穂 白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。

エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?

取材レポート
森アーツセンターギャラリー「バスキア展
バスキア
国立新美術館「カルティエ、時の結晶」
カルティエ
鳥取県立博物館「殿様の愛した禅 黄檗文化とその名宝」
黄檗文化とその名宝
福田美術館「開館記念 福美コレクション展」
福田美術館 開館
ハラ ミュージアムアーク「加藤泉 ― LIKE A ROLLING SNOWBALL」
加藤泉
太田記念美術館「歌川国芳 ─ 父の画業と娘たち」
歌川国芳
渋谷区立松濤美術館「日本・東洋 美のたからばこ」
美のたからばこ
東京国立近代美術館工芸館「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション
竹工芸名品
東京ステーションギャラリー「没後90年記念 岸田劉生展」'
岸田劉生
横浜美術館「オランジュリー美術館コレクション
オランジュリー
日本科学未来館「企画展「マンモス展」 その「生命」は蘇るのか」'
マンモス展
千葉市美術館「ミュシャと日本、日本とオルリク」'
ミュシャ オルリク
根津美術館「美しきいのち
美しきいのち
サントリー美術館「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部
美濃の茶陶
21_21 DESIGN SIGHT「虫展 ―デザインのお手本―」
虫 展
寺田倉庫「STAR WARS™ Identities: The Exhibition」
スター・ウォーズ
森美術館「塩田千春展:魂がふるえる」
塩田千春
東京富士美術館「フランス絵画の精華」
フランス絵画の精華
エリアレポート 秋田県立近代美術館 「若冲と京の美術」
[エリアレポート]
若冲と京の美術
エリアレポート 世田谷美術館 「チェコ・デザイン 100年の旅」
[エリアレポート]
チェコ・デザイン
エリアレポート MIHO MUSEUM「The 備前 ―土と炎から生まれる造形美―」
[エリアレポート]
The 備前
第3回 インターネットミュージアム検定
ミュージアグッズのオンラインショップ ミュコレ
2020年の展覧会予定(東京・名古屋・大阪 近郊)
2019年の展覧会予定(東京・名古屋・大阪 近郊)
皇室がご覧になった展覧会 博物館・美術館の情報
テレビでミュージアム 博物館・美術館の情報
エリアレポート(読者による取材記事) 博物館・美術館の情報
ニュース
一覧
東日本大震災・ミュージアム関連情報サイト MUSEUM ACTION
イベント検索ランキング
特別展 「恐竜博 2019」 ハプスブルク展−600年にわたる帝国コレクションの歴史 ゴッホ展 ラウル・デュフィ展 ― 絵画とテキスタイル・デザイン ―
ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 コートールド美術館展 魅惑の印象派 没後90年記念 岸田劉生展 カラヴァッジョ展
博物館・美術館検索
ミュージアムキャラクターアワード2018 ミュージアムキャラクターアワード
2019、グランプリは「つくぞう&つくみ」でした
ミュージアム干支コレクションアワード 干支コレクションアワード「猪」
グランプリは「ペッカリー(ヘソイノシシ)象形土偶」でした
人気の展覧会 ブログパーツ アクセス数が多い展覧会を地域別にご紹介、ご自由にどうぞ。
刀剣乱舞(とうらぶ)に登場する刀たち 「刀剣乱舞-ONLINE-」に実装された刀、IM取材分をまとめました。
パートナーサイト 関連リンク集

             

博物館、美術館、展覧会の情報登録
博物館、美術館、展覧会に最適。広告のお問い合わせ
インターネットミュージアムへのお問い合わせ

Copyright(C)1996-2019 Internet Museum Office. All Rights Reserved.
ミュージアム・博物館・美術館の情報サイト[インターネットミュージアム]は、丹青グループが運営しています
協力/ (株)丹青研究所 、編集・制作/ (株)丹青社