インターネットミュージアム
美術館・博物館・イベント・展覧会 インターネットミュージアム
【注意】新型コロナウィルス感染防止にともない、展覧会・イベントは中止になる場合があります。必ず公式サイトでご確認ください。[休館情報はこちら]
  インターネットミュージアム  >  エリアレポート  >  渋谷区立松濤美術館「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」

渋谷区立松濤美術館「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」

文 [エリアレポーター]新井幸代 / 2018年12月7日
人はなぜ、廃墟に魅了されるのか。
廃墟が描かれた歴史を、西洋、日本の両美術史から辿る企画展が開催されています。

廃墟が描かれた初期の作品では、廃墟は主題というよりも、舞台装置の一種のような風景の一部として描かれていた印象です。


左)シャルル・コルネリス・ド・ホーホ《廃墟の風景と人物》17世紀 油彩、板 東京富士美術館 / 右)ユベール・ロベール《ローマのパンテオンのある建築的奇想画》1763年 ペン、水彩、紙 ヤマザキマザック美術館
ところが18世紀になり、イタリアでポンペイなどの遺跡が発見され、廃墟巡りがブームになりました。すると、観光地で売られている絵葉書の先駆けというべき、お土産用の絵画(銅版画)の需要が高まりました。

江戸時代の浮世絵もお土産としての用途があったことを考えれば、今も昔も世界共通の嗜好性のようで親近感がわいてきます。


左)ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《『ローマの景観』より:ティヴォリの通称マエケナス荘の内部》1764年頃 エッチング、エングレーヴィング 国立西洋美術館 / 右)ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《『ローマの景観』より:通称ミネルヴァ・メディカ神殿》1764年頃 エッチング、エングレーヴィング 国立西洋美術館

お土産としての役割を考えると、自分が見たものを共有するためには建物の正確な描写が求められるはず。にも関わらず、あれもこれも切り貼りして詰め込んだ、現実には存在しない廃墟画もありました。
写真を加工して「盛る」のと同じような発想でしょうか?


ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《『ローマの古代遺跡』(第2巻Ⅱ)より:古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点》1756年刊 エッチング 町田市立国際版画美術館

西洋では17世紀の作品で廃墟が描かれたものがありますが、日本では江戸時代まで時代が下らなければならず、また、既存の西洋画をベースとしたものでした。


亜欧堂田善《独逸国廓門図》1809(文化6)年 紙本銅板筆彩 東京国立博物館


左)《古代ローマ繁栄之図:Rme dans son anciennce splendeur》18世紀 エッチング/右)ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《『建築と遠近法 第一部』より:古代のカンピドリオ》1743年 エッチング【こちらは、出品作品ではありません】

その後は徐々に、廃墟を主題とした絵画が描かれるようになっていきますが、廃墟的な絵画が多く描かれたのは、1930~40年代とのことです。
その後戦争に突入していくことを思うと、画家達が感じていた時代の空気みたいなものまでが伝わってきました。


榑松正利《夢》1940(昭和15)年 油彩、カンヴァス 練馬区立美術館

現代に入り、また廃墟を描いた絵が増えてきたそうです。
漠然とした不安を抱える世相を反映しているのかもしれません。


大岩オスカール《トンネルの向こうの光》1997(平成9)年 油彩、カンヴァス 福島県立美術館

大岩オスカールの『トンネルの向こうの光』。
これまでにも、絵の中の世界に惹き込まれるような作品はありました。
こちらは、絵を見ている現実の延長にトンネルが続いてるかのような不思議な感覚に陥りました。

ネタバレになるため多くは書けませんが、キャンバスにある仕掛けが施されています。作品キャプションに注目下さい。

展示を締めくくるのは、本展のために制作された野又穫の新作、『イマジン』2点です。


右)野又穫《イマジン‐1》2018年 アクリル、カンヴァス 作家蔵


野又穫《イマジン‐2》2018年 アクリル、カンヴァス 作家蔵

『イマジン‐2』で描かれたメインの建物の配下に拡がるのは、遊園地かテーマパークのパビリオンのような立体です。

それらは全て白で統一され、廃墟の跡のリセットされた世界のように「終わりのむこうへ」を感じさせます。

その一方で手垢の付いていない綺麗さも感じ、人から忘れられるのを待つ状態、廃墟になる予定が定められたものとも感じてしまうところが、本展で廃墟に魅入られた証かもしれません。


会場渋谷区立松濤美術館
開催期間2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
休館日12月10日(月)、17日(月)、25日(火)、12月29日(土)~1月3日(木)、1月7日(月)、15日(火)、21日(月)、28日(月)
開館時間10:00~18:00、金曜日は20:00まで(いずれも入館は閉館30分前まで)
所在地東京都渋谷区松濤2-14-14
03-3465-9421
HP : http://www.shoto-museum.jp/
料金一般 500円、大学生 400円、高校生・60歳以上 250円、小中学生 100円 ※その他、詳しい料金情報は【展覧会詳細へ】をご覧ください。
展覧会詳細へ 「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」 詳細情報
エリアレポーターのご紹介
新井幸代 新井幸代
興味の幅が広いため、美術館だけでなく、自然科学・歴史系の博物館も好きです。
直感の趣くまま、観たいな、良いな、と思った展覧会をレポートしていきたいとおもいます。
ブログ:~No Love, No Museum.~
http://ameblo.jp/nolove-nomuseum/

エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?

新型コロナウイルス特集 with corona after corona
新型コロナウイルス特集 美術館・博物館・ミュージアムの休館・再開情報(毎日更新)
新型コロナウイルス特集 開幕延期・中止になった展覧会 会場レポート
新型コロナウイルス特集 会期が変更された2020年注目の展覧会
新型コロナウイルス特集 再開したミュージアムで始まった展覧会
取材レポート
エリアレポート 豊田市美術館「久門 剛史 - らせんの練習」
[エリアレポート]
久門剛史展
東京ステーションギャラリー「神田日勝
神田日勝
東京都江戸東京博物館「奇才
奇才
東京国立近代美術館「ピーター・ドイグ」'
ピーター・ドイグ
国立西洋美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」'
ロンドンナショナル
エリアレポート 大阪市立美術館「フランス絵画の精華」
[エリアレポート]
フランス絵画の精華
エリアレポート 茨城県陶芸美術館「幻の横浜焼・東京焼」
[エリアレポート]
幻の横浜焼・東京焼
エリアレポート 京都市京セラ美術館がオープン
[エリアレポート]
京セラ美術館
エリアレポート 渋谷区立松濤美術館「真珠 ― 海からの贈りもの」
[エリアレポート]
真珠
足立美術館に「魯山人館」がオープン'
魯山人館オープン
クラシックホテル展
クラシックホテル
アソビル「バンクシー展
バンクシー
岡田美術館「生誕260年記念 北斎の肉筆画
北斎の肉筆画
三菱一号館美術館「画家が見たこども」'
画家が見たこども
エリアレポート 市原湖畔美術館「雲巻雲舒 ― 現代中国美術展・紙」
[エリアレポート]
雲巻雲舒
エリアレポート 東京国立近代美術館「ピーター・ドイグ展」
[エリアレポート]
ピーター・ドイグ
エリアレポート 細見美術館「飄々表具 ー 杉本博司の表具表現世界 ー」
[エリアレポート]
飄々表具 杉本博司
エリアレポート ふじのくに地球環境史ミュージアム「消えゆく隣人」
[エリアレポート]
消えゆく隣人
国立新美術館「古典×現代2020」'
古典×現代2020
21_21
デザイナー達の原画
エリアレポート 愛知県陶磁美術館「異才 辻晉堂の陶彫」
[エリアレポート]
辻晉堂の陶彫
第3回 インターネットミュージアム検定
B-OWND 工芸のマーケットプレイスミュージアグッズのオンラインショップ ミュコレ
2020年の展覧会予定(東京・名古屋・大阪 近郊)
皇室がご覧になった展覧会 博物館・美術館の情報
テレビでミュージアム 博物館・美術館の情報
エリアレポート(読者による取材記事) 博物館・美術館の情報
ニュース
一覧
東日本大震災・ミュージアム関連情報サイト MUSEUM ACTION
イベント検索ランキング
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 ハマスホイとデンマーク絵画 特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」 フランス絵画の精華
写真展「138億光年 宇宙の旅」 【特別展】竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス 真珠 ― 海からの贈りもの 特集展示 大津絵と江戸の出版
博物館・美術館検索
ミュージアム干支コレクションアワード 干支コレクションアワード「鼠」
グランプリは《大根喰う(大黒)》でした
ミュージアムキャラクターアワード2018 ミュージアムキャラクターアワード
2019、グランプリは「つくぞう&つくみ」でした
刀剣乱舞(とうらぶ)に登場する刀たち 「刀剣乱舞-ONLINE-」に実装された刀、IM取材分をまとめました。
パートナーサイト 関連リンク集

             

博物館、美術館、展覧会の情報登録
博物館、美術館、展覧会に最適。広告のお問い合わせ
インターネットミュージアムへのお問い合わせ

Copyright(C)1996-2020 Internet Museum Office. All Rights Reserved.
ミュージアム・博物館・美術館の情報サイト[インターネットミュージアム]は、丹青社グループが運営しています
協力/ (株)丹青研究所 、編集・制作/ (株)丹青社