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奈良国立博物館「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」

文:マンガ [エリアレポーター]ちゅーりっぷさぶれ / 2019年4月12日

 マンガ:ちゅーりっぷさぶれ

日本を代表する財閥コレクション

近代日本の実業家であり数寄者であった藤田傳三郎(1841~1912)と令息たち。
そのプライベート・コレクションを守り伝える大阪・藤田美術館のニューアル・オープンを控えて、同館所蔵品の約2000件のなかから、珠玉の名品128件が奈良国立博物館で公開されています。

本特別展の会場では、コレクションの性質から体系的に次の9章に分けられ、東洋・日本美術のほとんどの領域が網羅されていることが実感されます。
第1章と第2章では茶道具や茶掛としての役割を持つ陶磁器・金工・墨跡などが紹介され、故・傳三郎氏や子息たちのめざした美の世界観が立ち現れます。

国宝『曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)』を収集したのは長男の平太郎氏(1869~1940)です。
近年の学術調査の成果によれば、南宋時代(12~13世紀)に福建省建窯で焼かれた曜変天目が、杭州の宮廷関連遺跡から発掘されており、南宋宮廷でも愛好されていたことが分かっています。

鎌倉・室町時代の日本では、大陸からの輸入品であるいわゆる「唐物(からもの)」を重視する伝統が形成され、室町将軍家によって所持された曜変天目茶碗があったことも記録に残されている、と言います。

藤田美術館所蔵の『曜変天目茶碗』は江戸時代には徳川家康(1543~1616)が所有し、水戸徳川家の伝来を経て、大正七年(1918)には藤田家に購入されました。

曜変天目茶碗 中国・南宋 藤田美術館
また傳三郎氏は、明代(17世紀)の『交趾大亀香合(こうちおおがめこうごう)』を晩年の明治45年(1912)に購入しています。

千利休の花押がある盆が付属しており、茶の湯で珍重されてきたことが知られるものです。
ほかにも利休ゆかりの品と伝える『古芦屋春日野釜』(室町時代 15世紀)など、茶の湯の名品の数々がコレクションに納められています。

交趾大亀香合 中国・明 藤田美術館
藤田家父子が、歴代将軍をはじめとする為政者や茶人たちの価値観を引き継ぎ、「唐物愛好」の伝統を尊重しつつ、日本の美術品を好んでコレクション形成に努めたことを、肌で感じられる構成となっています。

その背景には、傳三郎氏の表明した「大に美術品を蒐集し、傍ら国宝の散逸を防」ぐ(「書画古器物の嗜好に就て」より)、という明確な意思もあったに違いありません。

以下の第3章から第9章まででは、茶の湯の関連品ではないコレクション、すなわち絵巻物・仏教絵画・仏教彫刻・工芸・典籍・考古などが展示され、日本仏教美術の粋が競われています。

「仏教美術の殿堂」とも呼ばれる奈良国立博物館……。
その奈良国立博物館を支える充実したスタッフを考えれば、藤田美術館とわずか30Kmしか離れていない奈良の地でコレクション展が開かれているのも、自然と頷かされます。
価値の再評価により、安心して、藤田家父子の蒐集品の鑑賞に集中できるのではないでしょうか。

とくに後半では、奈良国立博物館によって新たな価値を見いだされた展示作品群が、圧巻する量で好奇心を刺激します。


藤田美術館展 展示風景
また藤田美術館には、奈良ゆかりの宝物が多数収蔵されているのも特徴です。

たとえば廃寺となった内山永久寺旧蔵の国宝『両部大経感得図(りょうぶだいきょうかんとくず)』(1136年、藤原宗弘筆)、東大寺戒壇院三面倉房に伝わった重要文化財『華厳五十五所絵(けごんごじゅうごしょえ)』(平安時代後期 12世紀)、興福寺伝来の国宝『玄奘三蔵絵(げんじょうさんぞうえ)』(鎌倉時代 14世紀)など……。

時代を代表する傑作を目の当たりにすると、廃仏毀釈で日本の価値観がぐらぐらと揺り動かされ、崩されそうになっていたかが、偲ばれます。


重要文化財 華厳五十五所絵 平安時代(12世紀) 藤田美術館
意外にも、やまと絵による人物を描いた『阿字義』もまた、倒幕に関連して、一時的に永久寺に伝来していた経緯が明らかにされています。

本展覧会では、奈良県に縁のある作品以外でも、本来伝えられた地域や社寺などの情報が丁寧に扱われており、美的価値はもちろんのこと、人間の目線に立った歴史に思いを馳せることができます。


重要文化財 阿字義 平安時代(12世紀) 藤田美術館
さらに展示作品の制作背景についても、どのような用途に用いられたものであったかが多言語対応(日・英・中・韓)の解説パネルに明示されています。

仏堂の柱絵や法会で掛けられた掛幅画など、いつしか藤田傳三郎や子息たちの築きあげた小宇宙の中で、当時急速に失われつつあった中・近世日本仏教の営みと地続きになっていく錯覚を覚えます。

財界人として傑出した個人の蒐集した美術コレクションから、南都(奈良地方)を中心にした日本仏教美術の盛衰をほとんど網羅的に展観できるのは珍しく、藤田傳三郎氏たちの果たした功績の大きさが再認識されます。

なお会期中には、前期・後期に分けて展示替えが行われます。
本会場で出会ったコレクションをきっかけに、奈良の古寺を訪ねたくなる展覧会かもしれません。


会場奈良国立博物館
開催期間2019年4月13日(土)~2019年6月9日(日)
休館日月曜日、5月7日(火) ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館
開館時間9:30~17:00(最終入館は16:30まで)
所在地奈良県奈良市登大路町50
050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
HP : https://www.narahaku.go.jp/
料金一般 1,500円、高校・大学生 1,000円、小・中学生 500円
展覧会詳細へ 「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」 詳細情報
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0歳と3歳の男の子と夫との4人暮らし。
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