からくり人形は江戸中期にその技術が発達したといわれています。動かない人形が首、手足から伸びる糸を繰られ動き出し、さらに、ばねやぜんまいなどの機械仕掛けで自動で動く。当時の日本の細工技術は世界でも最高レベルのものでした。
名古屋で発展したのは祭りに使われる山車からくりでした。飛騨の高山まつりは有名ですが、尾張の祭りにもたくさんの山車が登場します。祭礼は儀式的な意味合いも強いので、からくりは、見ている人々に不思議と驚きの感動を与えて、神の存在を意識させる役割もあったのです。加えて、藩主が民衆の娯楽を奨励したことによって、優れた技術を持った職人がこの地方に集まったため、より高度なからくりがうまれました。全ての部品が分解・組み立て式の手作り、余程の精巧さ、緻密さがもとめられるため、製作技術の伝承は非常に難しいものです。
二代目萬屋仁兵衛氏は昭和38年(1963)に愛知県で生まれました。平成元年(1989)、26才の時に初代萬屋仁兵衛(八代目玉屋庄兵衛)に師事。平成7年(1995)に初代より、「飛騨高山 まつりの森」の人形を引き継ぎ制作すると、平成9年(1997)に名古屋市営地下鉄伏見駅の「口上人形」を、平成11年(1999)に文化フォーラム 春日井の「小野道風人形」を制作。平成12年(2000)には二代目萬屋仁兵衛を襲名しました。また、平成14年(2002)には名古屋市中区大須万松寺ビルに「白雪稲荷の物語」を制作。以降も、東海地方を中心として全国各地のさまざまな祭礼用人形の修復・復元を手がけてきました。現在は春日井市にある萬屋仁兵衛工房にて日々製作に精進を重ねています。
二代目萬屋仁兵衛自身によるからくり人形の実演と解説も行います。今回初披露となります「橋弁慶」「唐子遊」や「三番叟」のからくり人形の実演と合わせて、名古屋の山車楫方組(かじかたぐみ)、二番永田組の方々による「木遣り」も披露の予定です。
生のお囃子に合わせてのからくり実演は本来、祭りの時だけのためので、間近で見られるのは大変貴重な機会です。
最先端のロボット技術の話題とともに、「ものづくり名古屋」ということばをよく耳にします。その原点ともいえるであろう、尾張名古屋の伝統と、時代を経て受け継がれきた技の素晴らしさを再認識し、未来へ思いをはせて頂ければ幸いです。