フリオ・ゴンサレス(1876-1942)は「20世紀における鉄彫刻の父」と称され、現在も大きな尊敬を集めているスペインの彫刻家です。溶接の技術を用い、鉄のパーツを加工し組み合わせて構成された彫刻は、従来の彫刻の概念を一変させ、戦後の現代彫刻の展開に大きな影響を与えました。
バルセロナの鍛冶職人の家に生まれたゴンサレスは、金工職人として腕を磨く一方で、同地で興ったモデルニスモという前衛運動の空気に触れ、画家を目指してパリに移住します。油彩を描いていたゴンサレスは、1920年代末に同じスペイン出身で古い友人のピカソとのコラボレーションを通じて彫刻家としての自らの資質を自覚し、彫刻における革新的な表現を追求しました。
日本においてゴンサレスの仕事を体系的に紹介する初の機会となる本展では、金工職人としての仕事、1910年代の最初期の彫刻の作例等を含めた約100点の作品により、作家の歩みをご紹介します。初期の作品はもちろん、自覚的に彫刻家としての活動を開始してから晩年までのわずか10年余りの間に、幼少の頃から慣れ親しんだ素材である「鉄」を鍛え、切断し、曲げ、溶接しつつ「物質と空間の不可分な結合により生み出される彫刻」という独自のコンセプトのもとで彼が生み出した作品の数々をお楽しみいただければ幸いです。
*9月4日(金)は20:00まで開館(入館は19:30まで)