「生きるとは、楽しむことである。それには自由でなければならない。」と浅野竹二の版画の世界が我々に語りかけてきます。
京都生まれで今から約20年前に京都に没した浅野竹二(1900-1999)は、はじめ日本画家を志し、やがて木版画家に転向、明朗で光にあふれた独特の全国名所絵で知られるところとなりました。大阪、京都、東京など、温かみのある多色木版画の全国名所絵シリーズをご覧いただくと、ちょっとした全国漫遊、楽しい小旅行気分を味わえることでしょう。
そして自分で描き、彫り、摺る創作木版画を好むようになり、浅野の作品世界は大きく変化します。版木の中に誰も見たことのないような柔らかく、穏やかで、ぽかぽかとした春の日差しのような世界を作り出していきました。
昭和35年、アメリカの社会派の画家ベン・シャーンは、独特の石版画世界を作り出す画家でしたが、突如京都の浅野のアトリエを訪ね、浅野の作品を賞賛しました。この時から二人の交流が始まったのでした。この出会いが、浅野の独自の世界の創出にさらなる力を与えました。浅野の作品に、幼児性とも取れるほどの単純さ、大胆さ、純粋さ、そして愉快さをもたらしました。しかしこの浅野作品には、独特の人生哲学が含まれています。つまり、生きることを人間を中心に考えるのではなく、動物たちに人も含めて、命たちの営みとして、命の「ひとときの輝き」として愉快さを持って語っています。あっけらかんとして、と、生きることをなんの屈託もなく、心からの喜びの笑い声として描いています。
関西では高い評価を受けてきたユマニスト木版画家・浅野竹二の世界を関東圏で初めてまとめてご紹介いたします。ぜひご来館いただき、ご一笑くださいますようお願いいたします。