しもだて美術館では「アール・ヌーヴォーの華 アルフォンス・ミュシャ展」を開催します。
アール・ヌーヴォーとは、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパで開花した芸術様式で、草花を主題として繊細な曲線を描くデザインに特徴があります。この様式には日本美術の影響があるといわれ、自然の植物を使ったデザイン構成や、流水文様を思わせるような優美な曲線は、私たち日本人に親しみを感じさせます。
アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)は、アール・ヌーヴォーを象徴する作家です。彼は、現在のチェコ共和国で生まれました。20代にミュンヘンやパリへ留学し美術を学び、27歳でパリの人気女優サラ・ベルナールから依頼された舞台≪ジスモンダ≫(※)のポスターで成功をおさめて脚光を浴びます。その後、サラの芝居のポスターのほか、豪華本の挿絵や香水のパッケージ、切手や紙幣、有価証券、蔵書票、メニュー、さらにはアクセサリーのデザインを手がけるなど、商業デザインの世界で活躍をします。
ミュシャの作品は、日本でも当時留学生であった黒田清輝らによって明治時代にはすでに紹介され、今なお多くのミュシャのファンがいます。
このたびの展覧会では、≪ジスモンダ≫を始め、パリ時代のポスターや花シリーズ、四季シリーズなどの装飾パネル、挿絵作品、商品パッケージ、ポストカード、また食器や室内装飾など多岐にわたるデザインを集めた図案集など、様々な種類の作品を約400点展示します。その中には祖国チェコに帰国してから描かれた、チェコを中心としたスラブ民族の歴史や伝統を様々なシンボルや隠喩を込めたモチーフで表わす作品も含まれています。
これらの作品をご覧になり、ぜひデザイナーとしてのミュシャの仕事に注目していただきたいと思います。