市井の人々をいきいきと描いた鈴木賢二(1906-1987)は、版画家として、彫刻家として、そして漫画家として、昭和という困難な時代を駆け抜けました。その優れて前衛的な造形は、近代美術史のなかでも存在感を示しています。
栃木県下都賀郡栃木町(現・栃木市)に生まれ、のちに北関東の戦後版画運動を担った鈴木賢二は、1925年に東京美術学校(現・東京藝術大学)の彫刻科に入学後、プロレタリア美術運動に熱中し、漫画やスケッチで人物表現に秀でた才能を発揮しました。
1932年暮に栃木へ帰郷してからは彫刻家として活躍し、やがて第三部会の会員にもなったほか、工芸やエッチング制作など、多彩な分野への挑戦を試みています。
第二次世界大戦後には、社会運動にかかわった木版画を多く制作し、日本国内にとどまらず、中国やソ連など、国際的な広がりのなかで活動しました。そのメッセージ性の強い版画によって平和を希求し、懸命に生きる人々の側に立ち続けました。
ときに時代の波に翻弄されながらも、生涯にわたって、農村に生きる人々や都市の労働者たちに温かい眼差しを向け、そして快活な子どもたちを慈しみ深くとらえ続けた美術家です。
本展は、鈴木賢二版画館 如輪房の全面的な協力を得て、初期から晩年までの全貌を紹介するものです。版画、彫刻、工芸、資料など約350点で構成し、栃木市ゆかりの美術家を回顧します。
【関連企画】
(1)講演会「鈴木賢二と彫刻―昭和戦前期を中心に―」
講師:齊藤祐子氏(美術史家)
日時:3月4日(日午後2時~4時
会場:集会室(申込不要、聴講無料)
(2)ゲスト・ギャラリー・トーク
①講師:竹山博彦氏(美術評論家/鈴木賢二研究会)
日時:2月11日(日)午後2時~
②講師:河野エリ氏(とちぎ蔵の街美術館学芸員)
日時:2月25日(日)午後2時~
*集合場所はいずれも企画展示入口(申込不要、当日の企画展観覧券が必要)
(3)桜通り散策―軍都から文化の街へ
講師:佐藤信明氏(風待工房主宰)
日時:3月17日(土)午後2時~4時
集合場所:企画展受付
参加費:100円(保険代)
*事前申込みが必要です(先着30名)
*少雨決行予定、荒天の場合は屋内での解説に変更します。
(4)ギャラリー・トーク(担当学芸員による解説)
1月13日(土)午後3時30分~
2月3日(土)、17日(土)、3月3日(土)、10日(土)午後2時~
*集合場所はいずれも企画展示入口(申込不要、当日の企画展観覧券が必要)