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    レポート
    吉川霊華展 近代にうまれた線の探究者
    東京国立近代美術館 | 東京都
    マイナー作家は線描のスペシャリスト
    「吉川霊華(きっかわれいか)と説明しても、業界の人からも『女性ですか?』と聞かれるほど」と、担当学芸員の鶴見香織さんも苦笑するマイナーな作家ですが、優美な線描は要チェック。回顧展は約30年ぶりの開催となります。
    展覧会冒頭は、巨大な水墨画から
    第1章「模索の時代」
    第2章「金鈴社の時代」
    代表作《離騒》は、15年ぶりに官展に出品した作品
    《離騒》(部分)
    第3章「円熟の時代」。左は《清香妙音》
    第3章「円熟の時代」。中央は《不盡神霊》
    スケッチなど
    《羅浮僊女(らふせんにょ)》(部分)
    吉川霊華は明治末から昭和初めにかけて、線の美を探究した日本画家です。支援者に恵まれていたこともあり、帝展などの大きな展覧会からは距離を置いて活動していました。個人蔵が多く、公になっている作品が多くないことも、知名度が高くない一因といえます。


    会場

    会場に入ってすぐ目に入るのは、455.0×425.0cmという巨大な水墨画《神龍》。京都・方廣寺の天井画として描かれた作品で、壁面に収まらないため、巨大な斜台に寝せて展示されています。巨大な作品を実感できる、驚きの導入です。

    ただ、これらの作品は初期の「模索の時代」に描かれたもの。後半は、緻密な線描を駆使した作品が続きます。


    会場導入部

    近代絵画は写実やモダニズムに向かう方向が主流でしたが、その流れに背を向けるように、霊華はひたすらに線描の美しさを探究しました。

    模索の時代を経て、大正5年に美術団体「金鈴社(きんれいしゃ)」を結成。審査や一般の好みに左右されない自由な制作を目指した金鈴社という場で、霊華は確信を持って線描の探究に没頭します。

    金鈴社解散後も伝統復古と現代の理想を結びつけることを追究、その画業は円熟の境地に達します。


    《役小角》

    大正末年に制作された《離騒》は、15年ぶりに官展に出品したもの。その線の美しさは精霊の動きにもたとえられて絶賛されました。なのに戦後その名を聞くことが珍しくなったのは、主流的表現からの距離ゆえだったのでしょうか。


    《離騒》

    「忘れられた存在」(展覧会図録より) だったこともあり、作品400点を調査して企画したという本展。発掘されたばかりの線の探究者、じっくりとご堪能ください。(取材:2012年6月11日)


    会場
    会期
    2012年6月12日(火)~7月29日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(7月16日は開館)、7月17日(火)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/
    料金
    一般 850円(600円)、大学生450円(250円)
    ※( )内は20名以上の団体料金、いずれも消費税込
    ※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
    ※上記料金で入館当日に限り、同時開催の「写真と現在4:そのときの光、そのさきの風」、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧いただけます。
    ※開館60周年記念企画 誕生日は無料!
    開館60周年を記念して、ご自身の誕生日当日にご来館いただいた方は無料で入館していただきます。証明できるものをお持ちください。
    展覧会詳細 吉川霊華展 近代にうまれた線の探究者 詳細情報
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