草は緑色、顔は肌色。絵を描く時、色は対象にあわせることが当たり前。その束縛を解放したのが、19世紀末から20世紀初頭にかけての西洋の画家たちです。
印象派の先人たちは色彩のきらめきを感覚的に捉えましたが、これを理論的に追求し「色を純色に分割して描く=分割主義」を生み出したのがスーラでした。
スーラが開拓し、ポール・シニャックが普及させた分割主義を考察する本展。ただ、スーラとその周辺だけに留まらず、より広く分割主義をとらえて、地域や時代を超えた広がりを読み解いていくのが特徴的です。
第1章「印象派の筆触」
会場は「印象派の筆触」「スーラとシニャック ― 分割主義の誕生と展開」「ゴッホと分割主義」「ベルギーとオランダの分割主義」「モンドリアン ― 究極の帰結」の5章構成です。
展覧会前半では分割主義の萌芽と、スーラによる開拓を紹介。スーラは孤高の人物でしたが、外向的な性格のシニャックによって、その手法は大きく広がっていきました。
分割主義から大きな影響を受けた一人がファン・ゴッホです。展覧会メインビジュアルであるファン・ゴッホの《種まく人》は、ミレーの有名な作品に基づいた一枚。ミレーの作品は茶色で重い印象ですが、ファン・ゴッホによるこの絵は、大地をオレンジと青で描いています。
第3章「ゴッホと分割主義」と、フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年
スーラが31歳の若さで急死したこともあり、分割主義は本国フランスでは行き詰る一方で、周辺のベルギーやオランダでは熱狂的に迎え入れられました。
本展ではベルギーやオランダの20世紀美術を代表する作家も紹介。ファン・レイセルベルヘ、トーロップなど、日本ではあまりお目にかかれない画家の作品も多数出展されています。
第4章「ベルギーとオランダの分割主義」
展覧会の最終章がモンドリアン。抽象絵画の先駆者であるモンドリアンがこの文脈で紹介されるのは、かなり斬新に思えます。
モンドリアンの作品は7点。「黒い垂直線+三原色の平面」に到達する以前の作品もあるため、思考の変遷も楽しめます(ちなみにファン・ゴッホは9点、スーラも6点出展されています ※巡回展では作品数が異なります)。
第5章「モンドリアン ― 究極の帰結」
オランダのクレラー=ミュラー美術館が企画した、意欲的なコンセプトの展覧会。色そのものの魅力・迫力をお楽しみください。
なお、本展は全国巡回展。国立新美術館の後に広島県立美術館(2014年1月2日~2月16日)、愛知県美術館(2014年2月25日~4月6日)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月3日 ]