昨年のこの時期に開催された「オバケとパンツとお星さま」も好評だった東京都現代美術館。今年も赤ちゃんから大人まで一緒に楽しめる展覧会を企画しました。5人のアーティストが、こどもたちの身近にあるモチーフを使いながら構成しました。

まず最初は橋本トモコさんの作品。技法は古典的な油彩ながら、切り抜かれた作品を白い展示室に配したインスタレーションは、まるで絵本の１ページのよう。こどもが「初めて見る絵画」に相応しい作品として、１番バッターに起用されました。


橋本トモコさんの作品

一転して暗い部屋で光と影の作品を展示したのは、クワクボリョウタさん。照明を仕込んだ鉄道模型で、不思議な影が浮かび上がる《10番目の感傷（点・線・面）》は、小さな子どもの視覚世界を意識した作品です。刻々と変化する光と影の姿に、大人も見入ってしまう事でしょう。


クワクボリョウタさんの《10番目の感傷（点・線・面）》

暗闇を抜けると、明るい大きな空間。中央にある山のような造形物はすべり台で、会場で実際に滑って遊ぶことも可能です（大人もOKです）。

周囲には、動物をモチーフにした遊具も。ともに「楽園／境界」をテーマに構成した、船井美佐さんの作品です。


船井美佐さんの《楽園／境界》

つづいて、映像を使ったインタラクティブな作品。金澤麻由子さんによる《うつろい いろは》です。

四季の出来事がテーマになっており、鑑賞者がスクリーンの前に立つと、動物が現れたり、自分の顔が雪だるまになったり。こども達の喜ぶ声が聞こえてきそうな作品です。


金澤麻由子さんの《うつろい いろは》

最後は武藤亜希子さんの《水の路 w+a+t+e+r+w+a+y》。美術館がある木場・深川地域の特色でもある「水路」をテーマに、水の流れをイメージして制作しました。

作品は布でできており、鑑賞者が組み合わせたり外したりして形を変える事ができます。


武藤亜希子さんの《水の路 w+a+t+e+r+w+a+y》

ふだんの生活と比べると、美術館は非日常の空間。こども達がいつも見ていたものに「美術」というスパイスを加えると、新しい感覚や気持ちが生まれます。この体験が、こどもにとってすばらしい世界（ワンダフル・ワールド）に繋がりますように。
[ 取材・撮影・文：古川幹夫 ／ 2014年7月11日 ]