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    レポート
    マグリット展
    国立新美術館 | 東京都
    日常的なモチーフと、非日常の世界観
    ベルギーの国民的画家でシュルレアリスムの巨匠、ルネ・マグリット(1898‐1967)。馬上の女性と木々は位置が交錯し、鳥の形が空になり、岩は宙に浮かび上がる。一度見たら忘れられない不思議なマグリットの世界、東京では13年ぶりの大回顧展です。
    (右)《白紙委任状》
    (左から)《プリムヴェール[ポスター]》 / 《愛のワルツ[ピアノのための楽譜]》 / 《何も…[歌のための楽譜]》 / 《シメール[ピアノのための楽譜]》 / 《スノッブたちの行進[ピアノのための楽譜]》
    (左から)《嵐の装い》 / 《喜劇の精神》
    (左から)《未来の意味》 / 《ことばの用法》 / 《色彩の変化》 / 《出現》
    (左から)《イレーヌ・アモワールの肖像》 / 《禁じられた書物》
    (左から)《夢》 / 《夢》
    (左から)《観念》 / 《巡礼者》
    (左から)《自然の驚異》 / 《大潮》
    《大家族》©Charly Herscovici / ADAGP
    日本でも高い知名度があるマグリット。没した4年後の1971年に東京と京都で開催されたのを皮切りに82年、88年、94年、2002年と、ほぼ10年に1度のペースで回顧展が開催されています。

    今回は2009年にマグリット美術館(ベルギー王立美術館の別館)が開館してから初めての展覧会。同館はもちろん国内外の美術館やコレクターが協力し、約130点を紹介する大規模な展覧会になりました。

    会場は年代順に5章構成。赤いカーテンに円筒形青空のエントランスも、マグリットの《ある聖人の回想》がモチーフです。作品は会場に展示されていますので、探してみてください。


    1章「初期作品」、2章「シュルレアリスム」

    ベルギー王立アカデミーで絵を学んだマグリット。生計を立てるために商業デザインの仕事をしていましたが、デ・キリコやマックス・エルンストの作品に接してから、シュルレアリスムの世界にのめりこんでいきます。

    シュルレアリスムの中心であったパリに移住するも、グループを率いるアンドレ・ブルトンと衝突。再びブリュッセルに戻りました。

    ただ、大きく変わる環境の中で、この時期は自身のスタイルが固まっていった時期でもありました。窓、靴、山、家、女性の顔などモチーフは日常的ですが、描かれた絵画は極めて不可思議。独自のマグリット・ワールドを推し進めていきます。


    3章「最初の達成」

    戦時中にナチス・ドイツに占領されたブリュッセルで制作を続けたマグリットの絵は、明るい画風の「ルノワールの時代」に変化します。これはナチスの恐怖に対する抵抗を現したものです。

    48年には初個展をパリで開催しました。この時はまたしても画風を大きく変えて、荒々しい表現主義的に。フォーヴ(野獣派)をもじってヴァーシュ(雌牛)と呼びましたが、作品はひとつも売れず、展覧会は厳しく批判されました。


    4章「戦時と戦後」

    50代になったマグリットは、戦前のスタイルに回帰します。不安感やエロティシズムの要素こそ少なくなったものの、世界観はスケールを増し、その画業は新しい次元に進んでいきました。

    この頃から、アメリカをはじめ世界中で評価が高まったマグリット。ようやく晩年になって、経済的にも安定する事ができました。

    1967年、マグリットは膵臓がんのため68歳で死去。その世界観はポップ・アートやコンセプチュアル・アートなど、新しい時代の美術にも大きな影響を与えています。


    5章「回帰」

    今回の会場には珍しく作品解説パネルがなく、代わりにマグリットの言葉が各所で紹介されています(図録には1点づつの詳細な作品解説があります)。

    解説が無い会場で気付くのが「特定の作品に発生する人だかり」が少ない事。美術展にもかかわらず、人だかりは「絵を見ている」のではなく「パネルを読んでいる」ことが多い事に、今さらながら気付きました。見る側の感性が試される展覧会とも言えそうです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年3月24日 ]

    もっと知りたいマグリット 生涯と作品もっと知りたいマグリット 生涯と作品

    南 雄介 (著, 監修), 福満 葉子 (著)

    東京美術
    ¥ 1,680

    料金一般当日:1,944円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    国立新美術館 企画展示室2E
    会期
    2015年3月25日(水)~6月29日(月)
    会期終了
    開館時間
    <企画展>
    10:00~18:00
    ※当面の間、夜間開館は行いません。
    ※入場は閉館の30分前まで
    <公募展>
    10:00~18:00
    ※美術団体によって、異なる場合があります。
    ※入場は閉館の30分前まで
    休館日
    火曜日休館 ただし5月5日は開館
    住所
    東京都港区六本木7-22-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://magritte2015.jp/
    料金
    一般 1,600(1,400)円/大学生 1,200(1,000)円/高校生 800(600)円
    ※()内は20名以上の団体料金及び前売り料金
    ※中学生以下無料
    ※障害者手帳をお持ちの方と付添いの方1名は無料
    展覧会詳細 マグリット展 詳細情報
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