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    レポート
    広重と清親 ─ 清親没後100年記念
    太田記念美術館 | 東京都
    江戸と明治、風景画の両雄
    文明開化に沸く都市の姿を「光線画」で表現した小林清親(1847~1915)と、幕末の風景を抒情豊かに描いて西欧でも称賛された歌川広重(1797~1858)。風景画をはじめ戯画・花鳥画まで、ふたりの代表作が並びます。
    (左から)歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》 / 小林清親《東京新大橋雨中図》
    (左から)歌川広重《品川の月》《飛鳥山の花》《隅田川の雪》 / 小林清親《富士川上流秋景図》 / 小林清親《開花之東京 両国橋之図》
    (左から)歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》 / 小林清親《日本橋夜》
    (左から)歌川広重《名所江戸百景 する賀てふ》 / 小林清親《駿河町雪》
    (左上から)歌川広重《東都名所 佃島》 / 歌川広重《東都名所拾景 日本橋》
    (左から)小林清親《明治十四年一月廿六日出火 両国大火浅草橋》 / 小林清親《明治十四年一月十六日出火 両国焼跡》
    (右端)小林清親《上野東照宮積雪之図》
    (左から)小林清親《カンバスに猫》 / 小林清親《鶏にトンボ》
    (左から)小林清親《清知可保ん知 東京おうじ瀧の川》 / 小林清親《清親放痴 東京大川端新大橋》
    清親没後100年の記念展。明治の風景画が清親なら江戸の風景画はもちろんこの人、という事で、広重と清親をあわせて紹介する企画となりました。

    いつもと同様に、まず会場は畳のエリアの肉筆浮世絵から。広重の三幅対と、清親の三点が並びます。

    注目は右から2点目の小林清親による《開花之東京 両国橋之図》。横浜美術館で開催されていた「ホイッスラー展」に出品されていた《ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ》と、極めて似た作品です。ホイッスラーの作品は、広重の《名所江戸百景 京橋竹がし》の影響を受けて描かれたといわれますが、清親は広重作品を参照したのか、ホイッスラーを見たのか、はっきりした事はわかっていません。


    小林清親《開花之東京 両国橋之図》

    1階では、広重と清親の代表作を対比させながら展示していきます。

    時代は幕末と明治。人々の生活や町並みが目覚ましく変化していった様子を、ふたりの絵で楽しむ事ができます。

    広重の《東海道五拾三次》シリーズの冒頭に描かれた日本橋も、清親の時代には様変わり。大名行列と棒手振り(ぼてふり)の行商人は、ガス灯に浮かぶ人力車のシルエットに。橋そのものも太鼓橋から洋風の木橋に変わりました。


    1章「広重と清親 ─ 巨匠たちの競演」

    2階に上がると、広重と清親それぞれの風景画となります。

    広重は歌川豊広の門下。デビューしてからしばらくはヒットに恵まれませんでしたが、ベロ藍(ベルリアンブルー)を駆使した《東都名所》から新境地を開拓。《東海道五拾三次》は大ヒットとなり、以後も情緒豊かな風景画を数多く手がけました。1858年に死去。江戸時代だけを生きた広重は、浮世絵師としては幸運といえるかもしれません。

    逆に、時代の波に翻弄させられたのが清親。佐幕側の武家に生まれ、伏見の戦いにも参戦。将軍家の移住を受けて静岡に移った事もあります。明治7年に東京に戻った後、画業に専念。光と影を巧みに扱った作品を「光線画」と称し、独特の世界を作っていきました。その作品はワーグマンや下岡蓮杖との関係も指摘されますが、学習の経緯は不明です。


    2章「広重 ─ 江戸の風景画」、3章「清親 ─ 明治の風景画」

    地下の展示室では、風景画以外の作品も。花や動物、戯れる人々を描いた作品が並びます。

    中でも清親の動物表現は印象的。木版画の技術を駆使して、まるで油絵のような濃密な作品を生み出しました。実は、高橋由一が「鮭」を発表したのもこの時代。もとは日本画家でしたが油彩に転向した由一に対し、清親は従来の技術で西洋画の境地に挑んでいったのです。

    展覧会の担当は、太田記念美術館主任学芸員の赤木美智さん。広重・清親の違いと、展覧会の見どころについて伺いました。


    4章「花と動物たち」、5章「戯れる人々」 解説は太田記念美術館主任学芸員の赤木美智さん

    会期は長めですが、前期(4月1日~4月26日)と後期(5月1日~5月28日)で、全作品が入れ替え。リピーター割引(半券の提示で200円割引)もあります。

    なお後期は、葛飾北斎の娘で浮世絵師としても活躍したお栄(画号は葛飾応為)を主人公とした長編アニメーション映画「百日紅~Miss HOKUSAI~」の公開を記念し、応為の代表作《吉原格子先之図》が特別公開される事となりました。この作品も光と影の使い方が、まるで光線画のよう。あわせてお楽しみください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年3月31日 ]

    小林清親 東京名所図小林清親 東京名所図

    町田市立国際版画美術館 (監修), 桑山 童奈 湯川 説子 河野 結美

    二玄社
    ¥ 2,592

     
    会場
    会期
    2015年4月1日(水)~5月28日(木)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    (4月6、13、20、27~30日、5月7、11、18、25日は休館となります。)
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H270405hiroshige-kiyochika.html
    料金
    一般 1000円/大高生 700円/中学生以下無料
    展覧会詳細 広重と清親 ─ 清親没後100年記念 詳細情報
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