アンドレ・メテは1871年生まれ。陶磁器作家として20世紀前半に活躍しました。本展ではフォーヴの画家との共同制作をメインに取り上げていますが、メテが単独で制作した作品も、当時は大変高い評価を受けています。
会場入口から展覧会の最初は、メテが自身で手がけた作品の紹介から。幾何学模様と植物の組み合わせや、人物や動物などの模様が華やかな作品が並びます。また、陶器の絵付けのための下書きや型紙など、メテの緻密な仕事ぶりが伺える資料にも注目です。
メテのデザイン下絵と施釉陶器メテは1906年頃から画商ヴォラールの手引きでフォーヴの画家たちと出会い、共同制作を開始します。第2章の入り口では、素焼きした皿に絵付けするファイアンスと呼ばれる陶磁器の制作工程が、プロジェクションマッピングで紹介されています。
スペースプレーヤー映像「ファイアンス─陶工メテ×フォーヴの画家のコラボレーション」陶器の制作は絵画とは全く違う専門的な技術が必要なため、容易に手を出せない分野。画家たちにとってもメテとの共同制作は大変有意義なものとなりました。装飾的な幾何学模様や、裸婦、植物などを描いた陶磁器が並びます。
ただ、この共同作業は長くは続きませんでした。1907年以降その交流は活発さを失います。そして1910年のセーヌ川氾濫によってメテの窯が損壊してしたことで、フォーヴの画家たちとの共同制作は終焉を迎えます。
第2章展示風景メテが最も長く付き合った画家がルオーでした。フォーヴの画家たちがメテの工房を離れた以後も、ルオーはメテとの共同制作をつづけました。ルオーとメテは同じ年の生まれで、父親同士が同じ会社で働いていたことなどもあり、出会ってすぐ意気投合。親交を深めました。会場には、道化師などのルオーらしいテーマを扱った陶磁器が展示されています。
第3章展示風景二人の共同制作は1913年に終わります。しかしルオーは、装飾的な表現やマチエールの追及など、メテとの陶器制作のなかで得た成果を、今度は自らの絵画で表現して行く事となります。常設のルオーギャラリーではその一端を見ることができます。
日本初公開作品や、世界初公開作品などの貴重な作品が多く、巡回はありません。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2015年4月10日 ]