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    レポート
    歌麿・英泉・北斎 ─ 礫川浮世絵美術館名品展
    太田記念美術館 | 東京都
    閉館した美術館から、逸品を厳選
    2014年3月に惜しまれつつ閉館に至った、東京・文京区の礫川(こいしかわ)浮世絵美術館。約2400点の所蔵品は初摺りなど貴重な作品も含まれ、国内でも屈指の浮世絵コレクションとして知られいました。創設者の故・松井英男氏が愛した名品が、太田記念美術館で紹介されています。
    (左から)喜多川歌麿≪歌選恋之部 あらはるゝ恋≫ / 喜多川歌麿≪高島おひさ≫
    (左から)歌川広重≪名所江戸百景 大はしあたけの夕立≫ / 歌川国芳≪百人一首之内 大江千里≫
    (左から)喜多川式麿≪今容女歌仙 三拾六番続 松葉楼代々竹≫ / 歌川国貞≪北国五色墨 吉原芸者≫
    (左から)菊川英山≪帯を結ぶ遊女≫ / 菊川英山≪当世美人揃 ほんをとりのけしき≫
    (左から)歌川豊国≪三世坂東彦三郎の菅丞相≫ / 歌川豊国≪瀬川路考 葛の葉ひめ≫
    喜多川歌麿≪絵本笑上戸≫
    溪斎英泉≪艶本婦じの雪(上巻序図)≫
    溪斎英泉≪夢多満佳話≫
    楊洲周延≪徳川時代貴婦人之図 投扇興≫
    医学博士で浮世絵研究家の故・松井英男氏が創設した礫川浮世絵美術館。小ぶりな私設美術館ながら質の高い展覧会で、ファンに愛されるスポットでした。2013年末に松井氏が急逝、晴子夫人も後を追うように亡くなり、美術館は事実上の閉館に。コレクションは他に移管される事がほぼ決まっているため、礫川浮世絵美術館所蔵の作品展としてはこれが最後の機会となります。

    展覧会のタイトルどおり、冒頭で展示されているのは喜多川歌麿・溪斎英泉・葛飾北斎。松井氏の浮世絵コレクションは17世紀から19世紀まで多岐に及びますが、まずは人気絵師の代表的な作品から始まります。


    会場冒頭の畳のエリア。前期(10月25日まで)は、歌麿1点、英泉と北斎が2点づつ並びます。

    美人画の名手として知られる歌麿。「美人の顔は近くで見たい」という庶民の気持ちを知っていたのか、歌麿は役者絵の手法だった大首絵を美人画に取り入れ、一斉を風靡しました。

    ここでは同時期に活躍したライバルとして、窪俊満と鳥文斎栄之の作品と並べて紹介されています。


    歌麿が並ぶのは会場2階。歌麿は女性の表情のわずかな変化を描く事で、その内面まで表現しようとしました。

    釣り上がった目、下顎を突き出す面長の輪郭、そして猫背と、極めて特徴的な美人を描く英泉。英泉は松井氏の思い入れが強い絵師で、1997年に太田記念美術館で開催された英泉の没後150年記念展でも論文を執筆しています。

    英泉は菊川英山の門下。当初は英山風の穏やかな美人を描いていましたが、徐々に独自のスタイルを確立。じっとりとした退廃的な描写は、他の追随を許しません。


    溪斎英泉の作品

    江戸時代末期には国貞(三代豊国)、広重、国芳と浮世絵界を席巻した歌川一門。一門の祖は歌川豊春で、ヨーロッパ由来の銅版画をベースにしたと思われる、遠近感あふれる浮世絵を描きました。

    会場には豊春の作品をはじめ、孫弟子にあたる国直、国芳、広重、さらに後の世代の月岡芳年、楊洲周延、落合芳幾まで。その勢力は明治時代まで続きました。


    幕末の浮世絵界を席巻した歌川一門

    松井コレクションは版本や摺物(限られた人に配るための非売品)も充実しており、北斎や広重など一流絵師の作品が並びます。

    ここでも注目は英泉。腕をぎゅっと掴む≪夢多満佳話≫、美人の大首絵が並ぶ≪艶本婦じの雪≫と、続きが気になるところです。


    版本と摺物

    礫川浮世絵美術館の前には、豊洲にあった平木浮世絵美術館も2013年に閉館しており、実は「都内でいつでも浮世絵が見られる美術館」は少なくなってきました。「春画展」に注目が集まりますが、春画を深く知るためにも、ぜひ春画以外の浮世絵もお楽しみください(ちなみに歌麿・英泉・北斎は、いずれも春画展にも作品が出ています)。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年10月1日 ]

    ようこそ浮世絵の世界へ 対訳付ようこそ浮世絵の世界へ 対訳付

    日野原 健司 (著), 太田記念美術館 (監修)

    東京美術
    ¥ 2,160

     
    会場
    会期
    2015年10月2日(金)~11月23日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日休館、 展示替え期間(10/26~29)は休館
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H271011-koishikawa.html
    料金
    一般 700円/大高生 500円/中学生以下無料
    展覧会詳細 歌麿・英泉・北斎 ─ 礫川浮世絵美術館名品展 詳細情報
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