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    レポート
    浮世絵と喫煙具 世界に誇るジャパンアート
    たばこと塩の博物館 | 東京都
    凝った意匠は、日本ならでは
    2015年4月、墨田区にリニューアルオープンした、たばこと塩の博物館。移転後初めての展覧会が特別展示室で始まりました。同館が所蔵する資料の中から、浮世絵と喫煙具、計110点を紹介します。
    (左から)梨子地草花蒔絵提げたばこ盆 / 紫檀牡丹に蝶蒔絵たばこ盆
    (左から)梨子地波に葦蒔絵舟形たばこ盆 / 朱漆塗り行燈形提げたばこ盆
    (左から)黒漆塗り風吹牡丹蒔絵たばこ盆 / 黒漆塗り青貝螺鈿たばこ盆
    (左手前から)木綿網代織腰差したばこ入れ / 古渡有平縞更紗腰差したばこ入れ / 古渡縞鶏頭更紗腰差したばこ入れ / 古渡白地鶏頭更紗腰差したばこ入れ
    (上から)真鍮河骨形きせる(花見きせる) / 銅肩付河骨形きせる / 銅肩付河骨形きせる
    (左から)喜多川歌麿《児戯意の三笑 十艶名》 / 鳥文斎栄之《青楼美人六花仙 丁子屋雛鶴》
    初代歌川豊国《あやめの茶屋》
    (左から)二代歌川豊国《東名所 芝八景 芝浦の夕照》 / 二代歌川豊国《当世美人花合》
    会場
    たばこが日本に伝わったのは、16世紀の終わり。慶長年間(1596~1615)中頃以降には喫煙の習慣が広まっていきました。

    江戸時代の日本における喫煙は紙巻きたばこや葉巻ではなく「細刻みたばこをきせるで吸う」スタイルでした。その中で、喫煙具も独自の発展を遂げていきます。

    火入れ・灰落し・たばこ入れがセットになった「たばこ盆」。当初は平らな盆に載せていた事からこの名で呼ばれます。持ち手や風覆いが付くなど機能的になると同時に、デザイン的にも凝ったものが作られるように。上流階級が用いたものには、豪華な蒔絵なども見られます。


    さまざまな「たばこ盆」

    3点展示されているきせるで一番長いのは、なんと104.1cmもある「花見きせる」。江戸時代初期には、このような派手なきせるを持ち歩く事が伊達男や遊女の間に流行していました。他の2点は初期のきせるとして代表的な形です。

    たばこを持ち歩く際に必要なのが、たばこ入れです。当初は巾着などが転用されましたが、17世紀の終わり頃には油紙や絞り紙(ちりめん状の紙)でできたたばこ入れが一般に普及します。

    たばこ入れは、落語家の八代目桂文楽のコレクション。八代目桂文楽は子どもの頃にたばこ入れ屋で奉公していた事もあって、若い頃からたばこ入れを蒐集。うち40個の逸品が、たばこと塩の博物館の所蔵になっています。

    たばこ入れも、時代が下るに連れて装飾性が増します。革や布が使われるようになり、小さな金具にも凝った意匠が。根付や印籠、刀装具などにも見られる、日本ならではの高い工芸技術です。


    「きせる」と「たばこ入れ」

    本展で最も多く紹介されているのが浮世絵です。浮世絵には、たばこが描かれた作品も少なくありません。ここでは錦絵の祖である鈴木春信から、明治に活躍した豊原国周や井上安治まで、28名による64点が並びます。

    鳥居清長の《美南見十二候》は、品川の遊里を描いた揃物。画中には黒いたばこ盆やきせるが見られますが、このような遊び場において、たばこは無くてはならない嗜好品でした。

    浮世絵の定番ともいえる役者絵にも、しばしばたばこが登場します。初代歌川豊国による《あやめの茶屋》は、6人の人気役者を描いた作品。きせるに描かれた浮彫(丁子車)や、たばこ入れの金具の形(釻菊)が役者の紋の形になっている事で、どの役者が誰なのか分かります。

    歌川国芳《江戸自慢程好仕入 ほぐそめ》の女性は、紙の“こより”をきせるに入れています。ヤニで煙の通りが悪くなるため、きせるは時おり掃除が必要でした。


    展示しているすべての浮世絵に、喫煙具が見られます

    会場の特別展示室はかなり広い事もあって、ここだけでもかなり見応えがありますが、「たばしお」は常設展も充実しています(常設展の取材レポートはこちらです)。

    さらに今回の特別展は館蔵品ということもあって、通常の入館料で観覧可能。一般・大学生は100円、小・中・高校生なら50円というリーズナブルプライスです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月2日 ]



    ■浮世絵と喫煙具 世界に誇るジャパンアート に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年11月3日(火・祝)~12月13日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(入館は17:30まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし11月23日は開館、11月24日休館
    住所
    東京都墨田区横川1-16-3
    電話 03-3622-8801
    公式サイト http://www.jti.co.jp/Culture/museum/
    料金
    大人・大学生 100(50)円/65歳以上および小中高校生 50(20)円
    ※()内は20名以上の団体料金
    展覧会詳細 浮世絵と喫煙具 世界に誇るジャパンアート 詳細情報
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