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    レポート
    浮世絵 六大絵師の競演―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―
    山種美術館 | 東京都
    超レアな「東海道五拾三次」の扉題字まで
    「日本画専門美術館」として知られる山種美術館が、質の高い浮世絵を所蔵している事は、あまり知られていないかもしれません。六大絵師の名品をはじめ、稀少な作品を含む粒ぞろいの浮世絵コレクション。久しぶりに展覧会にお目見えしています。
    (左手前)葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》山種美術館
    (左奥から)鳥居清倍(2代)《初代沢村宗十郎の頼朝と初代山下亀松の亀が谷のお亀》 / 奥村政信《初代市川門之助の頼光と初代袖崎三輪野の花園姫》
    鈴木春信《梅の枝折り》 ともに山種美術館
    (左奥から)東洲斎写楽《八代目森田勘弥の駕篭舁鴬の次郎作》 / 歌川豊国《役者舞台之姿絵 やまとや 初代坂東蓑助の早野勘平》 / 歌川豊国《役者舞台之姿絵 高らいや 三代目市川高麗蔵の千崎弥五郎》 いずれも山種美術館
    (左から)東洲斎写楽《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》 / 東洲斎写楽《三代目坂田半五郎の藤川水右衛門》 ともに山種美術館
    歌川広重(初代)《東海道五拾三次》山種美術館 ※右手前が扉
    (左手前から)歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 庄野・白雨》 / 歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 亀山・雪晴》 ともに山種美術館
    (左手前から)歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 江尻・三保遠望》 / 歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 奥津・興津川》 ともに山種美術館
    (左から)酒井鶯蒲《紅白蓮・白藤・夕もみぢ図のうち「夕もみぢ図」》 / 東山魁夷《春来る丘》 ともに山種美術館
    開館50周年の山種美術館ですが、浮世絵コレクションの初公開は80年代になってから。現在の広尾に移転してから一挙に公開したのは2010年の「浮世絵入門」展のみと、滅多にお目見えしない作品が揃う貴重な展覧会です。

    今回の展覧会では北斎の通称「赤富士」、ゴッホが模写した広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》など知名度が高い作品も含め、86点の浮世絵版画を展示。会場には専門用語を分かりやすく解説したパネルも設置し、浮世絵初心者の方でも楽しくご覧いただけるように工夫されています。


    会場

    世界でも現存点数が少ない、東洲斎写楽の大首絵。他の絵師の作品に比べると市場価格も極端に高い事もあり「写楽を持っているか否かでコレクターの格が分かる」(山下裕二先生)とも言われます。

    山種美術館は、写楽の大首絵を3点も所蔵。所蔵浮世絵が約90点なので、驚異的な「写楽率」といえます。

    写楽の大首絵でしばしば見られるのが、雲母摺(きらずり)の背景です。背景の輝きは、角度を変えて見れば一目瞭然。展覧会では写楽の2点の大首絵が写真撮影可能ですので、ぜひSNSでの拡散をお願いします(三脚・フラッシュ・動画は不可)。


    東洲斎写楽の大首絵

    歌川広重の傑作、保永堂版《東海道五拾三次》。出発地の日本橋と到着地の京都・三条大橋を含めて55枚あるのは美術好きなら常識ですが、なぜか今回の展示は56枚? なんと、題字が摺られた画帖装の表紙(扉)が含まれています。

    中身も、初期に摺られた事が分かる痕跡があちこちに見られます。例えば《日本橋・朝之景》は、上部に雲が摺られているのが最初期の特徴(後の摺りでは省略され、単なる青のグラデーションになります)。《蒲原・夜之雪》は空の上部の濃い墨のぼかしが初摺の特徴で、空の下が濃くなっている後の摺りとは印象が異なります。広重の制作意図がそのまま伝わってくるような、貴重な揃いものです。


    歌川広重《東海道五拾三次》山種美術館

    開館50周年シンボルマークを設定、公募展を創設(再開)と、今年の山種美術館は実に精力的です。トリビア的に付け加えると、8月22日に発売された伊藤園「お~いお茶」秋限定パッケージも、山種美術館所蔵の酒井鶯蒲《夕もみぢ図》がモチーフになっています(この絵も本展に特別出品中です)。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年8月29日 ]

    一度は見たい「浮世絵」名作100選一度は見たい「浮世絵」名作100選

    白倉 敬彦 (監修)

    宝島社
    ¥ 1,296


    ■浮世絵 六大絵師の競演 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年8月27日(土)~9月29日(木)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館16:30まで)
    ※特別展の開館時間は変更になることもあります。
    休館日
    月曜日(但し、9/19は開館、9/20は休館)
    住所
    東京都渋谷区広尾3-12-36
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/ukiyoe.html
    料金
    一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料
    ※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
    ※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
    展覧会詳細 浮世絵 六大絵師の競演―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重― 詳細情報
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