1973年から亡くなるまで宮崎に居を構えていた生賴範義。展覧会は初の大規模展「生賴範義展 THE ILLUSTRATOR」(2014年)をはじめ宮崎で3回、他は明石と大分で開催されたのみで、関東での開催も今回が初めてとなります。
会場は新聞広告が並ぶ通路を経て、書籍が積み上げられた「生賴タワー」へ。生賴は依頼された仕事を断らず、生涯で3,000点以上を描いたといわれます。
生賴の名を一躍世界に知らしめたのが「スター・ウォーズ / 帝国の逆襲」です。日本の雑誌に描いたスター・ウォーズの世界観がジョージ・ルーカス監督に評価され、国際版ポスターを担当。壮大なスケールを1つの画面で見事に表現しました。
1984年に復活した「ゴジラ」のポスターも、生賴が担当。生賴は平成版ゴジラまでの全13作品のうち、9作品の宣伝用ポスターの原画を描いています。
会場入り口から
続いて、生賴と縁が深かった三人の作家が紹介されています。
まずは小松左京。「復活の日」新装刊の表紙を描いたのが生賴です。巧みな構成と描写を見て、小松は日本人が描いたとは思わなかったそうです。
平井和正とのコラボは「ウルフガイ」の主人公、犬神明を描いた事がきっかけ。会場には「幻魔大戦」に登場するサイボーグ戦士“ベガ”の立体造形も展示されています。
生賴が出版分野に進出するきっかけになったのが、吉川英治です。1966年に手掛けた「吉川英治全集 三国志」の新聞全面広告は話題となり、以降も宮本武蔵など多くの人気作品に起用されました。
生賴と縁が深かった、小松左京、平井和正、吉川英治
会場2階は雑誌や戦史・戦記から。人物の内面まで描いたような肖像画は、月刊誌「現代」や「パーゴルフ」の表紙。飛行機や戦艦も得意としており、戦闘シーンは臨場感にあふれています。
徳間書店の「SFアドベンチャー」の表紙は、1980年から担当。西洋の神話や歴史に登場する魔女的な女性たちを、7年7カ月にわたって描きました。
展覧会の最後はオリジナル作品です。ひときわ目を引く大作は、荒々しく戦争の惨禍を描いた《破壊される人間》。鹿児島の川内歴史資料館に寄贈された作品で、1984年に同館が開館して以来、初の館外搬出です。
会場2階
自らを「真正なる画家」ではなく「生活のための肉体労働者」と称していた生賴。確かに、生賴の作品は大衆文化の中にありましたが、その影響力は燦然と輝きます。映画監督の樋口真嗣さんをはじめ多くの異才が、生賴の絵に魅せられ、新たな創造を生んでいったのです。
過去の展覧会にも出展されなかった作品も出ていますが、会期は僅かに1カ月弱です。ぜひ、上野まで。特に男子は必見です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年1月8日 ]
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