昨年9月から今年3月にかけて、NHKスペシャルで放送された「人体 神秘の巨大ネットワーク」。タモリさんと山中伸弥さんによる軽快なナビゲートで人体の謎を解き明かすこの番組を、楽しんでいた方も多いと思います。
展覧会は番組と連動した企画展。高精細映像に加えて、世界各国から集められた貴重な資料が並ぶ3章構成です。
第1章「人体理解へのプロローグ」は、歴史資料が中心。人体研究が大きく進んだのは、ルネサンス期。ダ・ヴィンチは絵画制作のため人体を理解しようと、多くの解剖図を描きました。
古代ローマ時代から滞っていた人体理解を大きく進めたのが、近代解剖学の祖・ヴェサリウス。解剖図譜「ファブリカ」は、医学関係者でその存在を知らぬ人はいない、歴史的な資料です。
ひときわ目を引く人体模型は、キンストレーキ。19世紀に紙粘土でつくられた教育用の人体模型で、日本国内には4体しか現存しません。
第1章「人体理解へのプロローグ」続く第2章「現代の人体理解とその歴史」が、展覧会のメインです。「循環器系と泌尿器系」「神経系」「消火器系と呼吸器系」「運動器系」「人体の発生と成長」という5つのサブカテゴリで、人体の構造と機能を紹介していきます。
臓器など人体の各部位が「なぜこのような形なのか」という問いに答えを出すのは、実は簡単ではありません。機能面では説明できない事例もある中で、大きなヒントとなるのが、他の動物との比較。会場では人間の臓器とともに、多くの動物の臓器も展示されています。
技術の発展は、人体研究に大きな成果を与えました。顕微鏡の発明により、毛細血管を流れる血液を確認した事で「血液の循環」が証明されました。
幻想的な「ネットワークシンフォニー」は、最新の研究成果を色や音で表現した空間です。脳からの指令で臓器が働くのではなく、臓器同士による情報のやりとり。‘クライアントサーバー型’ではなく‘P2P型’、と言えるかもしれません。
第2章「現代の人体理解とその歴史」美しい「体内美術館」の写真を見ながら、第3章「人体理解の将来へ向けて」に続きます。
ゲノム解析は、今後の進歩が期待される分野。高速でDNA配列を決定できる次世代型シークエンサの開発により、DNAレベルでの縄文人の復顔が実現しました。3800年前の縄文人からも「A型の女性」「肌の色が濃い」「両親の血縁関係が近い」「お酒が強い」事まで分かります。
第3章「人体理解の将来へ向けて」奥深い人体の世界をわかりやすく解説してくれる本展。会期は長めですが、すでに土日を中心に入場待ちの時間も出ているようです。混雑状況は公式ツイッターなどでご確認ください。現在の所、巡回の予定はなく
国立科学博物館だけでの開催予定となっています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年3月12日 ]■人体 神秘への挑戦 に関するツイート