男性の理想的な身体表現をテーマにした本展。女性の美を中心に据えた展覧会はしばしば開かれますが、男性の裸体表現に着目した展覧会はやや珍しい試みといえます。
展覧会は3章構成で、第1章「人間の時代 ─ 美の規範、古代からルネサンスへ」から。古代ギリシャでは、外見の美と内面の善は一致するとされていたため、美しい肉体は重要な意味を持っていました。
アスリートの肉体は人体表現の規範となり、人間の姿で表現される神々も完璧な肉体に。古代彫刻における裸体彫刻は、ルネサンス美術の教科書になりました。
第1章「人間の時代 ─ 美の規範、古代からルネサンスへ」お目当ての彫刻2点は、第2章「ミケランジェロと男性美の理想」。階段を下がった展示室で、ドラマチックに登場します。
《ダヴィデ=アポロ》は、ミケランジェロが50代半ばで制作した作品。左腕を背中に伸ばす男性像、表面には荒々しいノミ跡も残ります。手の先に投石器があればダヴィデ、矢筒ならアポロですが、残されたのは石の塊。主題が確定できないため《ダヴィデ=アポロ》と呼ばれています。バランスが良い立ち姿を、360度まわってお楽しみください。
一方の《若き洗礼者ヨハネ》は、20歳をすぎた頃の作品。純粋無垢な少年の姿で「洗礼者ヨハネ」を表しました。スペイン内戦で被災し、わずか14の石片となってしまいましたが、破壊される以前の写真を元に修復、2013年にお披露目されました。
ミケランジェロ以外では《ラオコーン》にも注目。ラオコーン像は古代彫刻の傑作ですが、こちらはほぼ原寸大の大理石で模刻したルネサンス期の作品。1506年に像が発見された時、ミケランジェロも発掘に立ち会っています。この作品は、写真撮影も可能です。
第2章「ミケランジェロと男性美の理想」存命中から神話的な存在だったミケランジェロ。その顔貌や生涯は出版物を通じて称えられました。
肖像は没後まもなく彫刻が作られただけでなく、絵画やメダルにもなって広く伝播。ルネサンスの象徴としてヨーロッパ中に広まりました。
第3章「伝説上のミケランジェロ」展覧会では「理想の身体美」つながりとして、展覧会サポーターに新日本プロレスの棚橋弘至さんが就任。《ダヴィデ=アポロ》のポーズをして撮影・Twitterで投稿すると、新日本プロレスのチケットなどがあたるユニークなキャンペーンも実施中です。詳しくは公式サイトをご覧ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年6月18日 ]