それまでの本流だったアカデミズムの絵画に反旗を翻し、最終的に絵画の流れを変えた印象派。モネはまさに、印象派を代表する存在です。
展覧会は、日本初公開の作品を含むモネの絵画25点とともに、アメリカ抽象表現主義から現在活躍中の作家まで26作家の作品を展示。全4章構成で、両者を対比するように見せていきます。
第1章は「新しい絵画へ 立ちあがる色彩と筆触」。モネのキャリア前半の作品群(印象派期を含む)と、関係性が深い後世代の作品が紹介されます。
パレットで色を混ぜない「筆触分割」により、眼前の光景の再現を目指したモネ。ウィレム・デ・クーニング(1904-1997)による対象を瞬時に画面に定着させた作品も、印象派の継承として見る事ができます。
第2章は「形なきものへの眼差し 光、大気、水」。モネが生涯をかけて追及したのが、大気や光など形がないものの表現。ドイツの現代美術家、ゲルハルト・リヒター(1932-)も、Schein(シャイン:光/仮象)は重要なテーマ。水野勝規(1982-)は映像を用いて、印象派的な表現を試みています。
第3章「モネへのオマージュ さまざまな「引用」のかたち」は、モネ以外の作品だけで構成されています。
ポップ・アートのロイ・リキテンスタイン(1923-1997)は、「積みわら」や「睡蓮」を描いた作品を制作。モチーフはもちろんですが、ドットで描くスタイルも筆触分割の発展形として捉えられます。
第4章は「フレームを越えて 拡張するイメージと空間」。晩年のモネは視力が衰えるなか〈睡蓮〉の連作に没頭、ついにオランジュリー美術館の《睡蓮》大装飾画に到達します。
福田美蘭《睡蓮の池》は、本展に向けた最新作。レストランからの夜景とガラスに写り込んだ店内。モネが描いた反復のイメージを、人工の光で表現しました。
時代を超えてモネと後世代を結びつける、ユニークな企画。直接的な影響が分かる作品だけでなく、やや変化球気味の作品からモネの影響を推察する鑑賞方法もおすすめいたします。
モネについてあまり詳しくない方、または復習したい方は、公式サイトの「ジュニアガイド」がおすすめ。ジェットコースターのような人生が、マンガで楽しく解説されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年7月13日 ]