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    レポート
    没後400年 雲谷等顔展
    山口県立美術館 | 山口県
    「雪舟の後継」だけではありません
    桃山画壇で活躍した絵師、雲谷等顔(うんこくとうがん:1547-1618)。西国の有力大名・毛利輝元に庇護され、画聖・雪舟の後継者とされた実力者は、今年でちょうど没後400年です。記念の展覧会が、ゆかりの山口で開催中です。
    4章「桃山随一の山水画家」 (中央奥)雲谷等顔《蘇東坡・潘閬図屏風》 / (右)雲谷等顔《山水図屏風》ともにボストン美術館 Photograph © 2018 Museum of Fine Arts, Boston
    重要文化財 雲谷等顔《山水図屏風》東京国立博物館[展示期間:11/1~11/18]
    雲谷等顔《鹿図屏風》(右隻)山口・吉川史料館
    雲谷等顔《孔雀牡丹図屏風》山口・洞春寺
    雲谷等顔《三十祖像》京都・金地院[二幅ずつ前後期で展示替え]
    雲谷等顔《竹林七賢図屏風》東京・永青文庫(熊本県立美術館寄託)[展示期間:11/1~11/18]
    (左)雲谷等顔《楼閣山水図》熊本・松井文庫[展示期間:11/1~11/18] / (中央奥)雲谷等顔《溌墨山水図》広島・佛通寺 / (右)雲谷等顔《行体山水図》広島・佛通寺
    雲谷等顔《山水図巻》山口・吉川史料館
    (左から)雲谷等顔 玄英寿洪賛《山水図》東京藝術大学[展示期間:11/1~11/18] / 雲谷等顔 澤庵宗彭賛《山水図》山口県立美術館

    日本の美術史において特別な存在といえる、雪舟等楊(1420-1506?)。作品が何百年も“美の規範”とされ、その存在が神格化するほどの絵師は、現代に至るまで雪舟ただひとりです。


    雪舟の後継者として位置付けられるのが、同じ山口で活躍した雲谷等顔です。長谷川等伯は弟子筋と家系から「雪舟五代」を自称しましたが、等顔は毛利輝元から雪舟の《四季山水図巻(山水長巻)》(国宝、山口・毛利博物館)と、雪舟の旧宅・雲谷庵を拝領しており、いわば「お墨付き」といえます。


    ただ等顔は、単なる(というのも不遜ですが)「雪舟の後継者」だけではありません。展覧会では雪舟流の山水画だけでなく、あまり知られていない作品も紹介し、等顔の全体像を俯瞰します。


    会場は水墨画の代表作から。山口・萩を拠点に、京都の禅宗寺院や江戸藩邸の障壁画など、広く活躍した等顔。工房で制作するスタイルは、画業の初期に学んだ狩野派での経験から。さらに次男の等益を二代目とする、雲谷派の形成につながりました。


    本展注目のひとつが、初公開の着色花鳥画《孔雀牡月図扉風》。ほとんど知られていなかった大画面の花鳥画です。三年前に山口市内の寺院で発見され、修復を経てお披露目となりました。


    細部を見ると、牡丹の構図や彩色方法は中国絵画から、孔雀は狩野派から。等顔自身は中国に渡った事はありませんが、禅寺との関連から中国絵画を学ぶ機会があり、独自の作品を結実させたのです。



    展覧会では史料も紹介して、等顔の実像に迫ります。武家出身で、茶の湯や連歌などの素養を身に付けていた等顔。絵師だけではなく、毛利輝元の御伽衆(おとぎしゅう)、すなわち文化面を補佐するアドバイザーでもありました。


    輝元の慶賀の席で、重臣が居並ぶ中、他の御伽衆とともに同席しており、重用されていた事も分かります。


    多様な作品を手掛けた等顔ですが、傑作が多いのは、やはり山水画。「雪舟の後継」という位置付けから、顧客からも雪舟に倣った山水画を求められていたと思われます。


    展覧会では、現存する最初期の作品として佛通寺(広島・三原市)の障壁画を紹介。画題や表現に、狩野派の要素が残っています。


    等顔の水墨山水画は「真体・行体・草体」と、具象から抽象まで巧み。これまであまり研究が進んでいなかった行体・草体の山水画についても取り上げています。


    同時代の狩野永徳、海北友松らに比べると、知名度でやや分が悪い雲谷等顔。永徳なら獅子、友松は龍という十八番に対し、雲谷等顔の白眉は山水画。折り紙付きの実力者ながら、視覚的なインパクトの差で割を食っている感は残念です。


    展覧会は巡回せず、山口県立美術館のみでの開催。首都圏の方もぜひ、お楽しみください。


    山口県立美術館は、本展の会期中に入館者700万人を達成。コレクション展では修理を終えた雪舟《山水図巻》(重要文化財)や、香月泰男のシベリアシリーズも展示されています。素晴らしい五重塔(国宝)がある瑠璃光寺も、徒歩で20分弱。紅葉が見ごろです。


    ※会期中に展示替えがあります。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年11月7日 ]


    るるぶ山口 萩 下関 門司港 津和野’19るるぶ山口 萩 下関 門司港 津和野’19

     

    ジェイティビィパブリッシング
    ¥ 972

    会場
    会期
    2018年11月1日(木)~12月9日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:00~17:00(入場は16:00まで)
    休館日
    月曜日 ※ただし11月5日、12月3日(ファーストマンデー)は開館
    住所
    山口県山口市亀山町3-1
    電話 083-925-7788
    公式サイト http://yma-togan.com/
    料金
    一般 1,300(1,100)円 / シニア・学生 1,100(300)円

    【コレクション展セット券(当日券のみ)】
    一般 1,400(1,200)円 / 学生 1,200(1,000)円

    ※シニアは70歳以上の方、( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。
    ※高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在籍の方等は無料。
    ※障害者手帳等をご持参の方とその介護の方1名は無料。
    ※前売り券は、ローソンチケット(Lコード63495)、セブンチケットおよび県内各プレイガイドにてお買い求めください。
    展覧会詳細 没後400年 雲谷等顔展 詳細情報
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