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    レポート
    特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」
    東京国立博物館 | 東京都
    伝統と個性、書の各様
    唐時代の書の大家、顔真卿(がんしんけい:709-785)。初唐の三大家とは異なる美意識で、後世にも大きな影響を与えました。書の普遍的な美しさを法則化した唐時代を中心に、書の名品を国内外から集めた展覧会が、東京国立博物館で開催中です。
    顔真卿筆《祭姪文稿》唐時代・乾元元年(758)台北・國立故宮博物院蔵
    (左から)李斯筆《泰山刻石 ―百六十五字本―》秦時代・前219年 台東区立書道博物館蔵 / 《石鼓文 ―中権本―》戦国時代・前5~前4世紀 三井記念美術館蔵
    (左から)欧陽詢筆《九成宮醴泉銘 ―海内第一本―》唐時代・貞観6年(632) / 欧陽詢筆《九成宮醴泉銘 ―天下第一本―》唐時代・貞観6年(632) ともに三井記念美術館蔵
    褚遂良筆《孟法師碑 ―唐拓孤本―》唐時代・貞観16年(642)三井記念美術館蔵
    褚遂良模:原跡=王羲之筆《黄絹本蘭亭序》唐時代・7世紀 台北・國立故宮博物院寄託蔵
    唐玄宗筆《紀泰山銘》唐時代・開元14年(726)東京国立博物館蔵
    (左から)顔真卿筆《臧懐恪碑》唐時代・大暦3~5年(768~770)頃 / 顔真卿筆《逍遙楼三大字》唐時代・大暦5年(770) ともに東京国立博物館蔵
    懐素筆《自叙帖》唐時代・大暦12年(777)台北・國立故宮博物院蔵
    (左から)何紹基筆《楷書節録漢書黄覇伝六屛》清時代・19世紀 / 伊秉綬筆《行書七言聯》清時代・18~19世紀

    2013年には年始に「書聖 王羲之」、夏に「和様の書」が開催された東京国立博物館。書をテーマにした特別展は6年ぶりの開催です。


    まずは書体の変遷から。秦の始皇帝が中国を統一し、公式書体として「篆書(てんしょ)」が確立。簡略化したのが「隷書(れいしょ)」。さらに実用的な速書きとして生まれたのが「草書」や「行書」。公式書体の最終形である「楷書」は、現在でも漢字の標準体です。


    王羲之をこよなく愛したのが、唐の第2代皇帝・太宗です。全国に散逸していた王羲之の書をかき集め、最高傑作「蘭亭序」は自らの陵墓に陪葬。約300年前の書家が「書聖」として神格化されます。


    初唐の三大家である虞世南、欧陽詢、褚遂良(ぐせいなん、おうようじゅん、ちょすいりょう)は王羲之の書法を継承。楷書の典型を完成させました。


    そして、顔真卿の登場です。顔真卿は唐王朝のために、終生に渡って尽くした官僚でした。形骸化しつつあった王羲之の書法に対し、自らの情感を書に表す気運が高まる中、顔真卿は見事な書で応えていきます。


    展覧会の白眉が《祭姪文稿》。内乱の犠牲になった従兄の子を供養する文章の草稿で、悲痛と義憤に満ちています。顔真卿の肉筆は世界に数点のみ。台北 國立故宮博物院から、堂々の初来日です。



    続いて、日本における唐時代の書の受容について。三筆(空海・嵯峨天皇・橘逸勢)、三跡(小野道風、藤原佐理、藤原行成)の国宝・重要文化財が並びます。


    顔真卿の書は、宋時代になって評価が高まります。人間性と書が結び付けられ、個性的な書が尊ばれました。


    その後も、伝統的な書と個性的な書は消長を繰り返しますが、王羲之の書は真跡が存在しない事もあり、ついに神話は崩壊。野趣あふれる書風が主流になっていきました。


    チラシなどでは《祭姪文稿》に大きくスポットがあたっていますが、見逃せないのが「李氏の四宝」。李宗瀚(1769~1831)による拓本コレクションの中から選ばれた4種の孤本(拓本がひとつしかないもの)で、門外不出の逸品です。4種がそれぞれ独立ケースで展示されています。


    報道内覧会には中国メディアの姿も多く、関心の高さが伺えました。会期はわずか6週間、東京国立博物館のみでの開催です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年1月15日 ]


    王羲之と顔真卿:二大書聖のかがやき王羲之と顔真卿:二大書聖のかがやき

    富田 淳(監修)

    平凡社
    ¥ 2,700

    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

    会場
    会期
    2019年1月16日(水)~2月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~18:00
    ※総合文化展は17:00まで
    ※時期により変動あり
    いずれも入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし、2月11日は開館)、2月12日(火)
    住所
    東京都台東区上野公園13-9
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://ganshinkei.jp/
    料金
    一般 1,600(1,300)円 / 大学生 1,200(900)円 / 高校生 900(600)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※障がい者とその介護者1名は無料(要証明)

    【前売券】
    一般 1,400円 / 大学生 1,000円 / 高校生 700円

    ※2018年10月17日(水)~2019年1月15日(火)まで販売
    ※東京国立博物館正門チケット売場(窓口、開館日のみ。閉館30分前まで)、展覧会公式サイト、各種プレイガイドにて販売
    展覧会詳細 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」 詳細情報
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