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    レポート
    屏風をひらけば
    神奈川県立歴史博物館 | 神奈川県
    「木賊図屏風」覚えておいてください
    風を屏(ふせ)ぐ、という言葉に由来する屛風。風よけの道具から、調度品としての要素が強まると、さまざまな絵が描かれるようになりました。神奈川県立歴史博物館が所蔵する屏風を紹介する展覧会が、同館で開催中です。
    《木賊図屏風》江戸時代
    元信印《四季花鳥図屏風》室町時代
    前島宗祐《四季耕作図屛風》室町時代
    狩野探幽《四季耕作図屛風》江戸時代
    曽我二直菴《商山四皓・竹林七賢図屛風》江戸時代
    《南蛮屛風》江戸時代
    《平家物語図押絵貼屛風》室町時代
    《源平合戦図屏風》江戸時代[展示期間:3/2~3/17]
    《誰が袖図屛風》明治時代

    5万点を超えるコレクションを有する神奈川県立歴史博物館。さまざまのテーマで特別展・コレクション展を開催していますが、屏風だけにスポットを当てる企画は、1967年の開館以来初めての試みです。


    会場は章立てではなく、1つずつの屏風に向き合ってもらう構成。解説パネルの文字も最小限にとどめ、会場冒頭で「読む時間より、見る時間を多くとってください」(展覧会担当の橋本遼太学芸員)と呼びかけています。


    入って左手には、2種の《四季耕作図屛風》が並んで展示。左が狩野探幽、右が前島宗祐によるもので、前島版は一隻ですが、元は対になる左隻があったと思われます。


    ともに稲作の流れを描く枠組みは同じですが、前島版が作業そのものを描いているのに対し、探幽版は墨の濃淡で遠近感を出し、屏風全体の一体感に力点が置かれています。


    屏風絵が発展した大きなポイントとして、紙蝶番(かみちょうつがい)の発明があります。扇(せん:屏風のひとつの画面)から枠が無くなった事で、ひと続きの大きな絵が描けるようになったのです。



    本展最大の注目が《木賊図屏風》。水流を挟んで、真っ直ぐに生える木賊(とくさ)。画面の上部を大きく空けた、大胆な構図です。ほとんど展示される事が無かった作品ですが、今後、人気が出そうな予感がします。


    表面が固く、茎でものが研げるトクサ。トクサ→磨く→明るい月→兎、という流れから、円山応挙らの作品に「木賊と兎」の組み合わせが見られます。本作は月や兎こそ描かれませんが、金地を月の光に、右端の石(奇妙な形です)は、兎に見立てられるかもしれません。


    《源平合戦図屏風》も2種。左は六曲一双、右は六曲一隻です。六曲一双の方は、鵯越、敦盛、那須与一、安徳天皇の入水と、名場面を網羅的に描写。壇ノ浦まで描かれるのは珍しい作例です。六曲一隻は、敗走する平家一門が主題になっています。


    なぜか全員、表情が物憂げな《南蛮屏風》。左隻では船が左側に向かい、右隻は行列が右に向かっており、並べると方向が合いません。向かい合わせにすると方向が揃うので、そのような立て方だったのかもしれません(そもそも屏風の立て方に決まりはありません)。


    常設展観覧料(20歳以上 300円など)のみで見られる、嬉しい設定です。会期中で少しだけ展示替えがあります。


    本展は撮影可能ですが、マナーにはお気をつけください。展覧会の趣旨とは異なりますが、冒頭のメッセージが素敵だったので、最後にご紹介しましょう。


    ‘あなたの「撮りたい」と、隣の方の「ゆっくり静かに見たい」’

    ‘これらは等しく大切な気持ちです’


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年3月7日 ]


    るるぶ にっぽんの博物館るるぶ にっぽんの博物館

    るるぶ(編)

    ジェイティビィパブリッシング
    ¥ 1,000

    会場
    会期
    2019年3月2日(土)~3月31日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館16:30迄)
    休館日
    月曜日、3月19日(火)
    住所
    神奈川県横浜市中区南仲通5-60
    電話 045-201-0926
    公式サイト http://ch.kanagawa-museum.jp/exhibition/3692
    料金
    一般 300(250)円 / 20歳未満・学生 200(150)円 / 65歳以上・高校生 100円

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※中学生以下・障害者手帳をお持ちの方は無料
    ※神奈川県立博物館等の有料観覧券の半券提示による割引制度あり
    ※3月21日は当館の開館記念日のため観覧無料
    展覧会詳細 屏風をひらけば 詳細情報
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