文化庁、宮内庁、読売新聞社が協力し、皇室が守り伝えてきた「日本の美」を紹介する『紡ぐプロジェクト』。「両陛下と文化交流」展は本館特別4・5室でしたが、今回は特別出品を含めてパワーアップ。本館特別5・4・2・1室で、41件が全期間展示されます。
最大の見もの《唐獅子図屛風》は、会場冒頭にいきなり登場します。狩野永徳が右隻を、曾孫にあたる常信が江戸時代に左隻を描き、六曲一双屛風として伝わります。
高さ2.2メートル超という巨大な屛風。猛々しい獅子の姿もあって、迫力満点です。もとは城内の床貼付け、あるいは陣屋屛風とも言われています。
国宝《檜図屛風》は、永徳の最晩年の作。堂々たる檜の描写は、後年の狩野探幽の絵画と比較され、狩野派による図像の変遷の例としてしばしば紹介されます。
雪舟等楊による国宝《秋冬山水図》も、日本美術を代表する名作のひとつです。江戸時代に神格化が進み、画聖と称えられる雪舟。奥深い空間表現は、雪舟ならではの技術です。
立体の作品では、仁清による重要文化財《色絵若松図茶壺》に注目。京焼の大成者である野々村仁清、この茶壺は「仁清黒」とよばれる黒釉が特徴的です。
特別出品作品では、久隅守景による国宝《納涼図屛風》も出展。瓢箪がなる棚の下で、夕涼みにふける男女と子ども。ほのぼのとした作風は「最も国宝らしく無い国宝」とも言われます。
その右隣も特別出品で、円山応挙《牡丹孔雀図》。写生を重視して円山派を立ち上げた応挙、孔雀は応挙が得意にした画題のひとつです。
応挙は光格天皇の即位大礼の屛風も制作しました。今回の退位は、その光格天皇の退位以来の出来事でした。
数百年の時を超えて、現在の私たちがこれらの文化財を楽しめるのも、先人たちの思いと努力があってこそ。『紡ぐプロジェクト』は、美術品の保存、公開、修理という一連のサイクルを永続させる仕組みを作ることを目指しています。
本展では本館特別4室で、文化財の修理事業を特集的に紹介。改めて、保存と継承の意義についても考えさせられます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年5月9日 ]