日本でも展覧会が開催されたアントニオ・ロペス(1936-)をはじめ、エドゥアルド・ナランホ(1944-)、ゴルチョ(ミゲル・アンヘル・マヨ 1949-)など、写実絵画が盛んなスペイン。
スペインにおける写実の系譜は、ベラスケスやゴヤまで遡ることができるかもしれません。
今回の展覧会は、バルセロナにあるヨーロッパ近代美術館(MEAM)のコレクションを紹介する企画です。
MEAMは現代の具象作品(フィギュラティブ・アート)を扱う美術館として、2011年に開館。ホキ美術館とはコレクション分野だけでなく開館時間まで似ている事もあって、2015年から交流しています。
ホキ美術館のコレクション60点は、昨年秋にバルセロナで公開され、現地でも話題に。お返しの展覧会となる本展では、30代から70代までの現在活躍するスペイン作家の作品、59点が並びます。
では、印象に残った作品を何点かご紹介しましょう。
生首がゴロッと横になっているように見える作品は、ゴルチョの《眠らない肖像》。展覧会のメインビジュアルです。
巨匠といえるゴルチョですが、画業は独学。パリ滞在を経てスペインに帰国してからは、アントニオ・ロペスらと芸術グループ「ガジーナ・シエガ」を結成し、リアリズムの技法を磨きました。
エドゥアルド・ナランホも70代の重鎮。《ピアスをつけた女性》は、現代の女性のイメージを空想で描いた作品です。
ナランホはセビリアとマドリッドで絵画を学びました。その作品は、議会や空港など公共空間にも展示されています。
街角を描いた作品でアントニオ・ロペスを想起させるのが、1970年生まれのペドロ・デル・トロ《静寂のグランピア》。マドリッド・アミーゴス財団賞など、数々の受賞歴があります。
今回の「スペインの現代写実絵画展」は、ホキ美術館の4つのギャラリーで開催されていますが、他のギャラリーではホキ美術館のコレクションも展示されています。ふたつの国、そしてそれぞれの作家ごとの個性の違いをお楽しみいただけます。
「まるで写真のよう」と、判で押したように言われる写実絵画。確かにその通りですが、じっくり見ると作家によって描き方はかなり異なります。近くでテクニックを確認しながら、お気に入りの一枚を見つけてください。
ホキ美術館の作品は、今年、全国を巡回中(沖縄・酒田・岩手・佐賀・瀬戸内)です。佐賀と瀬戸内ではMEAMの作品も出展されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年5月16日 ]