室内に光や風を取りこむ窓。部屋の中から外を見る事ができ、開け放てば外部と繋がる窓は、インスピレーションの源になりやすいためか、しばしば美術作品のなかで表現されてきました。
マティスやクレーなど20世紀美術の巨匠から、新作の現代美術まで、全14章構成で幅広く紹介する本展。ここでは気になった作品を中心にご紹介します。
3章「窓の20世紀美術Ⅰ」には、20世紀前半の作品。都市の発展になって生まれたウィンドウ・ショッピングを絵画のモチーフにしたのは、ウジェーヌ・アジェやロベール・ドアノーなどです。
一方、アンリ・マティスやピエール・ボナールなどは、窓そのものを繰り返し描いています。
9章「窓からのぞく人Ⅲ」は、タデウシュ・カントル《教室――閉ざされた作品》のみ。カントルは演劇でも活躍しており、この立体作品はカントルの代表作の演劇「死の教室」をもとにしています。
カントルは「開かれた劇場」に対し「閉ざされた作品」を提唱。この作品も、窓越しに室内を覗き見るしつらえです。
10章は「窓はスクリーン」。マイクロソフトがOSをWindowsと名付けたように、コンピュータと窓には強い関係性があります。
JODIの《My%Desktop OSX 10.4.7》は、コンピュータの窓が次々に開いていく作品。少し前のパソコンは、トラブルでこういう感じになった事を思い出しました。
11章「窓の運動学」にある、ズビグニエフ・リプチンスキの映像作品《タンゴ》は傑作です。ボールを追いかけて窓から入る少年をはじめ、最終的に36人が現れますが、それぞれがぶつかる事なく動きます。デジタル合成が一般的ではなかった1980年に、なんと別々に撮影し、手作業で切り貼りして作られたものです。
最後の13章「窓は希望」には、ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》のみが展示されています。
リヒターは絵画と並行して50年以上にわたってガラスを用いた作品を制作。65%が透けて35%は像を写す特殊なガラスを使ったこの作品は、周囲を歩きながら見ると景色が万華鏡のように写り込みます。
他にもロイド・ライトやル・コルビュジエなど著名建築家のドローイングや、藤本壮介の大型コンセプト・モデル《窓に住む家/窓のない家》が前庭に設置されるなど、盛りだくさん。全部で58作家、115点というボリュームです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年10月31日 ]