2014年にも開館20周年記念の特別展として「大浮世絵展」を開催した東京都江戸東京博物館。本展はその第二弾という位置付けの展覧会です。
前回は時代順の構成でしたが、今回は絵師別。作品についても、歌麿は美人画、写楽は役者絵、北斎・広重は風景画、国芳は武者絵と戯画と、得意のジャンルに絞ったのが特徴で「誰もが知っており、そして誰もが見たい」浮世絵展になりました。
では早速、第1章の喜多川歌麿(1753年頃~1806年)から。美人画といえば歌麿、という評価に異論を挟む人はいないでしょう。女性の理想美を追求し、1793年(寛政5)頃に手がけた大首絵の美人画は大人気になり、絵師として確固たる地位を築きました。
第2章は東洲斎写楽(生没年不詳)。鮮烈な作品で、後の時代にも多大な影響を与えました。1794年(寛政6)5月に役者の大首絵でデビューするも、特徴を極端にデフォルメした描写は、当時としては前代未聞。活動期間は短く、作品数も多くありません。本展では代表的な大首絵を集めていますが、これだけのボリュームと良質なコンディションの写楽は、二度とお目にかかれません。
第3章は葛飾北斎(1760年~1849年)。「世界で最も有名な日本アーティスト」としてはもちろん、「最も有名な日本人」まで枠を広げても名前が挙がる事があるほど、世界中で高い知名度を誇ります。本展では冨嶽三十六景シリーズをはじめ、錦絵の揃物を展示。「Great Wave」こと神奈川沖浪裏は、あまりにも有名です。
第4章は歌川広重(1797年~1858年)。「東海道五拾三次」は遠近法を巧みに用いた大胆な構図で人気を博し、浮世絵史上最大のヒット作品になりました。後の時代でも‘広重’は風景画家の代名詞となり、小林清親は「明治の広重」、川瀬巴水は「昭和の広重」と称されています。今回は風景画のほか、花鳥画も紹介されています。
最後の第5章は歌川国芳(1797年~1861年)。メジャーな浮世絵師としてしばしば挙げられる「六大浮世絵師」(春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重)に国芳は入っていませんが、近年は人気沸騰。3枚続きの大画面を巧みに扱う構成力も、国芳ならではといえます。武者絵で世に出た国芳ですが、ユーモラスな戯画も得意でした。
それぞれの絵師のコーナーに、1~3枚の「みどころ」パネルも設置。初心者でも浮世絵のポイントが分かるよう、平易な文章で解説されています。
国際浮世絵学会監修の元、ボストン美術館、メトロポリタン美術館、シカゴ美術館、ミネアポリス美術館、大英博物館、ギメ東洋美術館、ベルギー王立美術歴史博物館などなど、世界中の名だたる美術館から名作が里帰りした本展。まさに「ザ・浮世絵展」といえる構成です。展覧会はすでに会期の半ばを過ぎました。お見逃しないように。
東京展の後は、福岡市美術館(2020年 1/28~3/22)、愛知県美術館(2020年 4/3~5/31)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年12月19日 ]